9.敵の数を数えろ-七日目-
全45話予定です
日曜~木曜は1話(18:00)ずつ、金曜と土曜は2話(18:00と19:00)をアップ予定です(例外あり)
動きがあったのはそれから一日たった昼である。
部隊員たちは交代で仮眠をとりながら二十四時間体制で基地の監視にあたっていた。昼の隊員が基地の動きを見つけた。
「アルファワン、見てください」
ちょうど仮眠をとっていたアルファワンに隊員が声をかける。
「あれは、レイドライバーか!」
「それとあれを」
そう言って格納庫の方を指すと、
「戦闘機だな。何か変わったところは……あれか!」
そう言った先には、複座の戦闘機が並んでいた。その後方座席付近は、黒いものが乗っている。
「例の最新鋭機ってやつですかね」
先ほどからアルファワンに話しかけているのはアルファエイトである。当初は分隊は予定調和の志願兵七名で行く予定だったのだが、一人本当に志願したものがいたのだ。
「私を連れて行って頂けませんか?」
そう言う彼の瞳は輝いていた。もちろん、生きて帰られる確率の方が少ない事、いざとなったら[足切り]にあう事も話したのだが、それでも、
「お願いします」
という熱意に負けて連れてきたのだ。念の為、隊長が彼が所属する部隊の人間から話を聞いたところ、どうやら彼は[鼻が利く、運のいい奴]らしい。その隊の人間も[是非連れて行ってやってくれ]という。それで八名になったのだが、やはり幸運も持ち合わせているのか、最初に異変に遭遇したのが彼である。
「何機いると思う?」
アルファワンが問う。その問いに、
「ここから見えているのが四機、うち一機が最新鋭機ですよね。もし三交代制であれば十二機の三機、四交代制であれば十六機の四機と考えますが」
それは案外いい線をいっている、アルファワンはそう考えた。
確かに交代制なのだろう。こちらの最新鋭機だってそんなひょいひょいといる訳ではないし増産されるわけではない。現に機密もあるので末端の人間には情報は降りてこないが、噂では三機止まりらしい。敵の状況もこちらとそんなに変わらないだろう。
とすれば。
「よし、ノーズアートと識別番号をメモしろ。そこから割り出す」
「了解です」
そうして全体数を割り出す作業が始まった。
引き続き二十四時間見張っていたが、どうやら毎日飛んでいる訳ではないようだ。帝国も情報の扱いに慎重になっている証拠、と言ったところか。実経験を積ませたいが共和国にも接しているこの地でであまり見られたくはない。だが、ずっと隠しておくわけにもいかない。そんなところだろう。
そうこうしているうちに七日が過ぎた。
この場所に来て六日で、ほぼこれだろうという機数が導き出せた。それによると四交代制で十六機、うち最新鋭機は四機という結果が出た。
レイドライバーは何故か二体しか見えなかった。それは全数が二体なのか、それとも先ほどの話ではないが警戒して表に出さないのか。
「どうしますか?」
と別の隊員に聞かれたアルファワンは、
「ここに展開して七日が過ぎた。リミットはあと三日ある。だが、今の状況を鑑みるとあと三日でレイドライバーが姿を現すとは思えない。とりあえず第一目標は敵戦闘機の数だ。それだけでも予想がついたのだから、これでよしとしよ……」
次の瞬間、アルファワンはこと切れていた。
他の隊員も何が起きたのか分からないでいた。だが、一人また一人と倒れていく。
この陣地に機銃掃射があったのだ。
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