5.会議が行われていた-アルカテイル基地に向けてのこれからの話-
全45話予定です
日曜~木曜は1話(18:00)ずつ、金曜と土曜は2話(18:00と19:00)をアップ予定です(例外あり)
危惧されていたエルミダス基地への空襲はなかった。それは、帝国もアルカテイルの街に再度進出するのにその持てるリソースをフルに使っていたという事なのか、どちらにせよ真意は定かではないが、エルミダス基地は制空権を復活させ、帝国はアルカテイルの基地を取り戻した。
ミラール市はそのまま同盟連合が押さえている。危惧されていた共和国の[横やり]もなくそれは進行したのだ。
つまり、カズが倒れた戦闘状態の前に戻った、という事である。
そんな中、エルミダス基地の一室では会議が行われていた。そこにいるのは司令、副司令、参謀と補充された機械化部隊の隊長、隣の基地から来ている航空部隊の隊長、それにカズである。
司会役の参謀が、
「今日集まっていただいたのは他でもありません。一度は奪取したアルカテイル基地に向けてのこれからの話です。現在、ご存じのとおり我々はエルミダス基地をベースにしていますが、機械化部隊の一部はミラール市の街外れに展開しています。中心部に展開していない理由は、先の帝国が放った核爆弾によるものであることは言うまでもないと思います」
そう前置くと、
「敵はアルカテイル市全体を奪還したものと推定されます。同市は共和国とも接している[ホットスポット]であります。ですから、どうにかしてここを落とし、ベースをここに築きたいと考えております。そこで」
提案されたプランは、先の失敗を踏まえて、まず敵情の把握を正確にする、というものだ。その為に先行偵察として目立たない人数、具体的には一個分隊規模の偵察部隊を編成、先行偵察の任につかせる。その際、レイドライバー一体ほど随伴させる、というものだ。
初めは歩兵部隊だけで行かせる案も出たのだが、万一、敵戦闘部隊との遭遇になった際、情報を持ち返えられない懸念が出てきた。隊員たちの命の安全、というのもある。だが言葉は悪いが[折角情報に投資するなら情報の回収だけはしたい]という訳だ。それに、敵陣地内ではエルミダスまで届くような無線を使うことなど御法度である。
ではどうするか。
ある程度離れた位置にレイドライバーを展開し、歩兵部隊を行かせる。そして内情を把握した時点でレイドライバーに情報を提供、レイドライバーに搭載されている指向性のアンテナで情報をミラール市の前線部隊に送信、それをエルミダス基地に送信、歩兵部隊とレイドライバーは撤収、という流れである。
これなら貴重なリソースであるレイドライバーの拠出は最小限に絞りつつ、敵情の把握が出来る。さらには、仮に歩兵部隊が全滅したとしても、レイドライバー単体なら帰還も可能だろう、という推測だ。それに、最悪のケースとしてレイドライバーを失う事になっても、一体だけで済むのだ。
あの戦闘から一か月、敵レイドライバーの数はおそらく四体、こちらは四体とワンワン一体の計五体である。仮に一体失ったとしても同数、それに実戦経験がある分、こちらが優位だ。おそらくは敵レイドライバーは四体ともアルカテイル基地にいると思われるが、他の戦力が知りたい。具体的にはあの戦闘機である。勿論、その戦闘機が最新鋭機なのかどうかまで調べるつもりではあるが、戦闘機の数だけでも分かれば、手が出せるか否かが分かる。
そして敵戦力が分かった時点でそれに応じた戦力を傾ける、そんな作戦である。
「以上になりますが、質問は?」
と参謀が聞く。
「この一個分隊の人選は?」
副司令だ。
「志願兵を充てるつもりであります」
――いるんかね、そんなもの好き。
「機械化部隊は、今回はどうすれば?」
機械化部隊の隊長だ。
「戦闘になった際のバックアップとしてミラール市の部隊と合流を」
「航空部隊はどうすれば?」
航空部隊の隊長だ。
「航空部隊におきましては垂直離着陸機が配備されていると思います。ミラール市の街も基地も核汚染で街がほとんど使えません。それに機械化部隊を集結させるとなると制空権のからみもあるので、その戦闘機を郊外の集結地点に展開、待機を」
――ウチは誰を行かせるつもりなんだ? まぁ、順当にいけば。
「我々は? それに……」
「レイドライバー隊はエルミダス基地にて待機。出撃する機体は……」
参謀はチラッと司令の顔を見る。
だが答えたのは、
「トリシャ君に行ってもらう」
副司令だ。
「とは?」
カズが質問すると、
「彼女はスナイパーだ。長時間の待機任務にはうってつけだ。クリス君は先の戦闘で使用したばかりだしな。それに、潜入任務向きかと言われれば違うだろうよ。レイリア君は言うまでもなかろう? よろしいですかな? 司令」
――だよな、スナイパーってのはそういうもんだ。
「そうだな、トリシャ君が適任だろう」
最後は鶴の一声で決まった。
「作戦決行は一週間後、航空部隊と機械化部隊は本日から順次移動を開始。陸上部隊は準備を整え六日後の二〇時に移動開始。以降、行軍は夜間のみとする。各自、準備に入られたし」
との参謀の締めでお開きとなった。
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