40.どこから聞いていた?-時間もらえるかしら?-
全45話です
日曜~木曜は1話(18:00)ずつ、金曜と土曜は2話(18:00と19:00)をアップ予定です(例外あり)
「!?」
二人とも声にならない。トリシャはまだ麻酔で眠っていたのではないか?
だが、クリスより一瞬早く現実に戻ったカズが、
「どこから聞いていた?」
と冷静に聞くと、
「初めから……ごめんなさい、ちゃんと言えばよかったかしら」
トリシャはすまなそうにしている。それはそうだ、こんな話、まず前段階から話をしないと大概の人は拒否反応が出て当然なのだから。
「あんたたち、そういう関係だったのね。ミーティングってのは……あえて聞かないわ」
遅れて我に戻ったクリスが再び顔を真っ赤にする。
「ああ、きみの想像通りだ。クリスはオレのものだ」
――オレだけのものだ。
「二人は付き合ってるの?」
ずいぶん突っ込んでくる。だが、ここで引くわけにはいかない。
「いや、付き合ってはいないし[そういう行為]をした事もない」
正直に話す。
「そうか、じゃあ私にもチャンスはあるんだ」
トリシャはボソッとそう呟くと[ん?]と言ったカズに、
「それって主従関係って事でいいのかしら?」
そう問い返す。
「そうだ、もっと言えばクリスはオレの所有物だ。だから」
「だからクリスは前向きになれたのね。あの市街地戦から気にはなっていたんだけど。あんたがクリスの心を救ったのね」
――ん? 何だろうこの違和感は?
「さっきも言ったじゃない、私も混ぜてくれないかしら、って」
二人して疑問符が取れないその二人に、
「こんな話になったら話すしかないわね。私はカズの事が好き、よ。夜のオカズにしちゃうくらいね」
そんな話は初耳である。まぁ、本人が初めて話すから当たり前ではあるのだが。
「ねぇ」
トリシャがカズに、
「少し語らせてもらえない? ここで私が改修を拒めばクスリか殺処分でしょ? そうしたら多分私は私でいられなくなる」
と尋ねてくる。事実、その通りなので何も言えない。
「どんな話を?」
「たわいない話。そう、昔話から今の話まで、かな。時間もらえるかしら?」
トリシャはあんな話を聞いたあとだというのに冷静だ。
「ああ、聞こうじゃあないか」
カズがそう言う。クリスは黙ったままだ。
二人がそれ以上口を開かないのを確認してトリシャは話し始めた。
全45話です