4-3
ある日、図書館に行くと、
リリアーナ嬢の姿があった。
読んでいたのは薬草の本、
まだ、体調が優れないのかと焦ったが、
孤児の為だと話を聞いた。
その際、「一石二鳥」と言う言葉を聞いて、
驚く。
それは、この国では使われていない言葉で、
前世、日本で使われていた言葉だったから。
私には幼い頃から、日本人である前世の
記憶があった。
そしてエリーザの言葉の端から、
どうやらこの世界がゲームの世界らしいと
知ったが、どのゲームが思い当たる事もなく、
ただ、エリーザに魅了されていた男が、
自分も含め”攻略”されていたからだと、
理解していた。
ひょっとして、私とエリーザだけでなく、
リリアーナ嬢も転生者なのではないか?
何度となく、質問を重ねるうちに、
その事を確信していった。
そして、彼女こそが、
前世、愛して、でも結ばれなかった女性、
その人ではないかと思い至った。
彼女が26歳の時、自分の元を離れていったのは、
病気の為だと知っていた、
でも、傍にいたいと願った所で、
彼女が悲しむだけだと理解していた。
彼女とは会わない、
その代わり、彼女の写真や様子など、
両親から話を聞いて、
彼女の好きそうな物を、
渡してもらえるようお願いした。
遠くで、ただ彼女を思うだけの日々を送った。
もう、あの時の切ない思いはしたくない、
今度こそ、自分の手で、彼女を幸せにしたい。
彼女が婚約者候補である事を、
本気で神に感謝した。
ゲームも、シナリオも、何も関係ない、
この国の民を、そして誰より大切な彼女を
幸せにする、そう心に誓った。