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秋になり学園祭が行われた、
商業をメインにする者は出店を出し、
他の貴族は呼ばれた大道芸や劇を見たりと、
お祭りのような楽しい空気に包まれている。
普段、商人を呼んで買い物をするので、
出店での買い物は珍しく、前世を思い返してしまう。
この出店では、地方から集めた珍しい物も沢山あり、
見ているだけで、楽しめた。
もちろんバッチリ(主に食べ物を)購入もしている。
劇は今流行りの恋愛もの、
身分差があるものの、女性の勇気と知恵で、
大貴族と結ばれると言う、オーソドックスな物だった。
それらを楽しみ、夜になり、
簡単なパーティが開かれる。
そこで、ヒロインは王子とダンスをしていた。
この学園祭のパーティで誰と踊るかで、
誰を攻略しようとしているかが分かる。
王子と踊っていると言う事は、
ヒロインはやはり王子狙いだったのだろう。
そして、ここまでくると、
王子は攻略されてしまっていると考えてもいい・・・
ヒロインに合わせ、一流のダンスを披露する王子、
表情は穏やかで、幸せそうにすら見える。
お茶会をし、悪い噂からかばってもらえて、
なんとなく、攻略を回避できているかもと思って
いただけに、暗い気持ちになる。
ここはゲームの世界、私はあくまで悪役令嬢・・・
涙が出そうになって、踊る二人を後目に、
庭のガゼボに移る、夜風が肌に当たって気持ちいい。
「リリアーナ?」
「王・・・ユリウスさ・・ま」
いきなり現れた人物にどきどきする。
「どうしてここに・・・」
「うん、どうしても君と過ごしたくて」
「え・・・?」
攻略されているはずの王子、
でも、と思いながらも、少し期待してしまう。
「これを」
そう言って、王子がブローチを手渡してくれる。
これは出店で、恋が実るおまじないと言って、
売っていたブローチ!
「ありがとうございます」
前世私はおまじないとか、占いとかのグッズが好きだった。
そんな当たるかどうか分からない物を・・・とか言いながら、
前世の彼氏が買ってくれたのを思い出す。
決して高価な物ではない、おまじないグッズだった事は、
偶然かもしれない。
でも、私が好きな物を、沢山の物の中から選んでくれた事が、
私の中で特別で、嬉しかった。
微笑むユリウス様を見て、月の光が、全てを満たして
くれている気持ちになった。