3-4
放課後、1人で本を読んでいると、
優しい声が降ってきた。
「お邪魔していいかな」
「王子!」
「まだ、王子なのかい?
僕の事は名前で呼ぶよう言ったはずだけど?」
「申し訳ありません、ユリウス様」
そう言うだけで、心臓がどきどきする。
週に一度のお茶会の日ではないのに、
会えるなんて、ラッキーだわ。
「何の本を読んでいたのだい?」
「ええ、薬草の本です」
「どこか体が悪いのか!」
思わず大きな声を出した王子を、
落ち着かせる。
「いいえ、違います、
薬草でも、栽培方法です」
本の表紙を見せ、王子はやっと落ち着いた
ようだった。
「それは良かった、でも何で栽培方法を?」
「孤児院ですが、簡単に育てられる薬草があれば、
孤児達が育てて、体調の悪い村人に分ければ、
孤児院も収入ができ感謝されますし、
村人も健康で、一石二鳥かなと」
王子は感心した表情を見せる。
「そんな事、考えた事がなかったよ、
確かに実現すれば、双方に利益がある」
真剣に考える王子を、頼もしく見る。
「しかし、君は教会の司祭を追い出した
悪女と噂されていたが、この様子だと、
そうした理由がありそうだね」
その噂は知っていたので、少し困った顔で、
微笑むだけに留める。
私が、教会を私物化していた司祭を罰した事を、
司祭が恨んでおり、教会と繋がりがある、
ヒロインの力になっているのは知っていた。
どこまでもついてまわる、ゲームの力に、
王子が影響されていない事はほっとしつつ、
それもいつまで続くのか、不安に襲われていた。