おやつゲンカ
「別に要らない態度だったじゃん!」
「あの時は気分じゃなかったの! 後で食べようと思ってたの!」
しつこい追求に指摘を返すと、朝月が聞き分けのない子供の様に言い訳を叫び、いつもの兄妹喧嘩がリビングで繰り広げられていた。
涼火の手にはたった今食べ終えたばかりのエクレアの包装が。
「なら羽衣姉の手作りしたコーヒーゼリーがあるじゃないか!」
エクレアの包装を握り潰し、飲んでいたカップをテーブルに乱暴に置き、小さい兄を睨む。
「あれはっ! ……なんか危険な気がするっ!」
妹の提案に喧嘩で眉間に寄っていたシワを増やして答えた朝月。
「それは同感だな!」
納得の理由だったので叫び返し、睨み合ったまま動きを止める。
するとお風呂から上がった父親が現れ、もはや日常風景の兄妹喧嘩を叱る事なく、冷蔵庫へ歩いて行く。
鼻歌交じりに冷蔵庫の扉を開け、愛娘手作りのコーヒーゼリーを手に取った。
「羽衣が作ってくれたこのコーヒーゼリーを食べるとよく眠れるんだよな」
独り言を口にする疑問はあるが、その内容に二人とも無言になる。
「……」
「……」
言葉を失った涼火は、複雑な表情を見せる朝月に提案する。
「なぁ、兄貴。綱手通りあるじゃん?」
朝月は乗り出していた身体を引いて、妹の言葉に小さく頷く。
「うん」
「あの商店街のさ、ラーメン屋近くにケーキ缶の自販機が出来たんだって。買いに行かない?」
「行く。超行く。すぐ行く」
予感が的中してしまう姉に恐怖を覚えつつ、コーヒーゼリーの消費は父親に任せ、二人はケーキ缶を買いに出かけた。
続く……かも?