表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巽日記、  作者: 庚午澪
13/32

誘った場所は……

「あーくん、ウォータースライダーで遊びたくない?」

 唐突にソファの上でだらけていた姉が、ローテーブルで雑誌を開いていた兄貴に問いかけた。

「えっ?! 行きたい!」

「そう? じゃあ行っちゃおうか」

「本当に?」

 突然の誘いにも喜び、純粋な反応を見せる朝月。

「ちなみにウォータースライダーは貸し切りだから独り占めだよ。一緒に無限に滑ろうね」

「本当!? やった!」

 余りに警戒心の無さにため息を吐いて兄を連れ去ろうとする羽衣に胡乱な瞳を向ける。

「それラブホだろ? この前テレビで紹介されてたところ」

「えっ……」

 諸手を挙げて嬉しそうにした表情が一瞬で固まる。

「遠いしどこに連れてこうとしてるの。兄貴は高校生なんだからラブホはマズいだろ」

 テーブルに肘をついてソファの姉を注意する。

 けれど全く聞く耳を持たなく、軽い口調で言葉が返された。

「えー、大丈夫だよ。バレなきゃセーフらしいし、これの登場人物は皆成人済みの設定だから」

「羽衣姉、冗談を真面目に言わない。同人誌の苦しい言い逃れの常套句なんてリアルで通用する訳ないだろ」

 メタ発言風にすれば誤魔化せるなんて考える姉が危うく、誘われたウォータースライダーの実態に兄は警戒を露わにする。

 そんな怯える朝月に尚も説得にかかる羽衣。

「最近ラブホは本来の目的以外に健全な使い方をする人たちが多くなってるって聞くし、ウォータースライダー滑り放題だよ?」

「んー……」

「ことある毎に兄貴を性的な対象として見てる姉を信じろと? それは無理でしょ。警戒するって。それに兄貴もそこは躊躇うなよ」

 小学生みたいな兄を叱った。

「面白いお風呂とかあるかもよ?」

 朝月に対して諦めるという文字が無いのか、羽衣は懲りずに誘い続ける。

 そんなにウォータースライダーが魅力的なのか、また秒で断れない彼を睨む。

「……嫌だ。どうせ入って来るんでしょ?」

 ウォータースライダーの独り占めをようやく諦めた兄は拒否を示した。

 しかし、これで引き下がるなら姉は重度のブラコンをしていない。

「そうだよ」

 開き直るというか元から拒否される事を見越していた羽衣は頷いて更に押す。

「あーくんと裸の付き合いするんだから。全身隅々まで洗って、汚れたらすぐに胸でもお尻でもキレイにしてあげる」

 初めて聞いたならドン引きな内容に涼火からはため息が零れた。

「下ネタ禁止! 高校生になってまで姉さんと一緒に入れる訳ないでしょ」

 朝月は姉の発言に怒るけれど、羽衣は弟の指摘には動じない。

「え、入ってるじゃん」

「姉さんが無理やりお風呂場にくるからでしょ。同性なら兎も角、高校生は一人でお風呂に入るものだよ」

 見た目のせいもありお風呂に一人で入ると主張する姿は、まるで背伸びをする小学生みたいにしか映らない。

「え、じゃあ大丈夫だね。あーくんの裸は鎖骨下から太股まで謎の光で隠されてるから」

「えっ、何の話?」

 また訳の分からない理屈が飛び出し、戸惑う兄の代わりに涼火が割って入る。

「光で隠されてないだろ。兄貴が同性な訳ないのはスキンシップが激しい羽衣姉が一番分かっていることでしょ。いい加減二次元ルール持ち込むのは止めなよ」

 今回は何に影響されたのか、普段にも増して意味不明な言い訳を重ねる姉だったが、パンッ! と一つ手を叩いて二人に向けて言う。

「無駄話はお終い。兄貴、宿題出てるだろ。一緒にするぞ。羽衣姉は邪魔しない様に大人しくしてて」

「はーい」

 気のない返事ながらも宿題を取りに行く兄に不満顔を浮かべる姉。

 そんないつもの光景に小さな笑いが漏れる。

 これだから私は友だちが少ないのかもしれない。

 こんなきょうだいとのやり取りも、それなりに楽しく寂しくないから周りに比べて友達を作ろうとする意識が薄いのかもと自覚した。




        続けていいのか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ