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31.

大変長らくお待たせいたしました(汗)

亀更新になりますが、頑張って更新します‼︎



 午前の授業が終わったことを告げる鐘が学院中に鳴り響く。

 昼食を食べに食堂へ行く生徒たちの中で、ヴィアは自分の席に座ったまま俯いていた。

 朝食を食べずにいたからなのか、それよりも前世のことを考えて寝れずにいたことが原因なのか体調があまり良くなかった。それでも何とか午前中は乗り切ったが、このままでは午後は持ちそうになかった。

 心配している友人たちに保健室に行くことを告げてヴィアは席を立つ。が、立った瞬間に立ちくらみがしてヴィアは倒れる。

 教室内に生徒の悲鳴が上がる。

 悲鳴を聞きつけたノエが教室に飛び込むと、シルビアたちに支えられているヴィアの姿が目に飛び込んだ。

 ノエはヴィアの元に駆け寄り、シルビアたちから話を聞きながらヴィアを抱き上げる。


「殿下は私が保健室に連れて行きます。心配だとは思いますがご令嬢方は通常通り過ごされてください」


 ノエは三人にそう告げると保健室に向かう。

 ヴィアの意識があれば、彼女たちに心配するなと言うだろう。今の主人は自分のために誰かが犠牲になるのを嫌がる性質だ。

 チラリと後ろを振り返るとシルビアたちが食堂の方へ向かっていくのが見えた。

 ヴィアのことを理解してきたのはノエだけではなかった。シルビアたちもヴィアのことを理解しているからこそ、ノエの言葉に従ってくれたのだ。ノエはシルビアたちに感謝し会釈すると保健室へと急ぐ。



◇◇◇◇◇◇◇◇


 

 ーーーどこか懐かしい声が聞こえたような気がして目が覚めた。


 

 ヴィアはまだ寝足りないのか目を擦りながらゆっくりと上体を起こす。ぼーっと辺りを見回すと見覚えるのある人達が目に入る。

 


「そんなとこで寝てたら風邪ひくわよ」


「しょうがないなーーは」


「夜更かしばっかしてるからだろ」


 これは夢だろうか。

 もう会うことのできない家族の姿が目の前にあった。

 前世の記憶が戻った当初、ほぼ毎晩のように夢に現れていたのにいつしか見なくなっていた。今、この夢を見ているのは昨日寝不足になるまで考えていたからだろうか。いや、そんなことはもうどうでもいい。

 夢でもいいから会いたかった。

 そう思ったら自然と体が動いていた。ヴィアは思い切り母親に抱きつくと声をあげて泣いた。

 母親は少し驚くもすぐに、ヴィアの体をトントンと軽く叩き落ち着かせる。

 父親と兄もヴィアの様子を心配そうに見守る。



 どれくらいそうしていただろうか。ヴィアは落ち着いたのか、母親から体を離すとジッと家族を見る。

 懐かしい温もりに触れたことでヴィアはずっとここにいたいと思っていた。否、今までの世界の方が夢だったのだと。

 自分は死んでいなかった。ただ変わった夢を見ていただけだった。自分をそう納得させるとヴィアは父親と兄の方へ行き、二人と話し始めた。


 家族と過ごす時間は楽しくてあっという間に時間が過ぎていた。

 空は夕陽が沈みかけていた。

 もうこんな時間なのだとヴィアが思っていると母親がヴィアへと問いかける。


 「ーーは帰らなくていいの?」


 ヴィアは質問の意図が読めなかった。

 自分の家はここで、家族の元にいるのにどこへ帰るというのか。ここにしか居場所がないのに何故そんなことを聞くのかと。

 ヴィアの様子から混乱しているのが見て取れたのか、母親は諭すように言葉を続ける。

 

 「あなたの居場所はもうここじゃないの。待ってる人がいるでしょ」


 「なんでそんなこと言うの?私の居場所はここだけだよ!」


 懐かしい温もりに触れ、過ごしていたのに、否定するかのような言葉に困惑する。自分はここに居たいと訴えると感情が抑えれないのか、ヴィアの瞳からぽろぽろと涙が零れ落ち、その場に崩れ落ちる。

 イヤイヤと子どものように駄々をこねる。

 兄が背中をさすって落ち着かせようとしてくれているが、ヴィアの涙は止まる気配はなかった。


 「あなたがここに居たいと思っているように、私達もあなたとずっと居たいと思ってる。でも…もうそれができないの。今、一緒にいる事も本当は……」


 母親の言葉はそれ以上続かなかった。

 ヴィアも頭では理解している。今、一緒にいるのは夢だからだと。現実ではないのだと。だけど、気持ちが追いついていかない。


 「ーー、聞こえないのか?ずっと呼ばれていたんだぞ」


 兄が不意に言う。

 誰に呼ばれるというのか、とヴィアが思っていると微かに聞こえた。家族のものではない声が。

 ヴィアが顔をあげて兄を見ると、「もうずっと前から呼ばれてたぞ」と苦笑まじりに告げられた。それは呆れと揶揄いを含んでいた。

 誰が自分を呼ぶのかと、その声の主が気になり耳をすます。


 『………ヴィア!ヴィア!目を開けてくれ…』


 か細かった声は徐々に鮮明になり、言葉が聞き取れる。

 呼ばれている。グレンに。

 自分は一人じゃなかったのだと、心配してくれている人がいたのだと、グレンだけでなくクロエやルカの姿をヴィアは思い出す。

 なんであんなに自分に優しくしてくれた人達を忘れていたんだと、ヴィアは自分自身に憤り、パンッと両手で頬を叩くと、家族の方へ向き直る。


 「駄々をこねてごめんなさい…そして、今まで育ててくれてありがとうございました。私はもう行くね」


 吹っ切れたように清々しく言い切るヴィアの体を家族は優しく抱きしめる。


 「もう会えなくても、姿が変わっても、ーーが大事なことは変わらない。それだけは覚えていて」


 母親の言葉にヴィアは頷き家族を抱きしめ返す。最後に家族の温かさに触れることができて良かったと思いながらヴィアは目を閉じた。

 

 



◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「ヴィア!」


 自分を呼ぶ力強い声に誘われるようにゆっくりと瞼を開ける。

 霞む視界に映るグレンの表情は泣き出しそうなほど歪んでいて、ヴィアが初めて見るものだった。

 それだけ心配させていたんだと、ヴィアは理解し安心させるように微笑んだ。


 「ただいま」


 ヴィアの言葉にグレンはなんとか笑みをつくり、「おかえり」と返した。その言葉に満足したヴィアはゆっくりと瞼を閉じてまた眠りについた。

 グレンはもう一度ヴィアの名前を呼び顔を覗き込むが、先程までの固い表情とは違い、穏やかな表情で眠っていたのに安堵する。ヴィアの頭を撫でながら、おやすみと告げると自分もその場で眠りについた。




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