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29.5


29話でヴィアが部屋から出て行った後の話です




 ヴィアが部屋から出て行き、残された面々は暫く黙り込んでいた。

 グレンはこの沈黙をどうするべきか考えていたが、それよりも何故ヴィアは部屋から出て行ったのかだ。

 グレンはドロテアとビビアナの二人と仲良しというわけではなく、しかもドロテアとは先日揉めたため内心居心地が悪かった。

 ノエを呼ぼうかとも考えたが、それだとノエを巻き込むことになる。さすがにそれはしのびないのでやめた。

 それよりも、グレンは先程のヴィアの言葉が気になった。

 先日の会話とはドロテアに連れて行かれた時にした会話だろう。あの日のことはドロテアとヴィア両名から話を聞いてはいたが、詳しい会話の内容までは聞いていない。だから、ヴィアがドロテアに向けた言葉の意味をグレンは分からない。

 視線を上げ一息吐くと、ドロテアがこちらを見ていた。


「何か?」


「あんたに見届けてほしいことがある。ちょい居心地悪くなるがいいか?」


 グレンはドロテアが何をしようとしているのかは分からないが、了承の意を込めて頷く。

 ドロテアはグレンの了承を得ると椅子から立ち上がりビビアナに手を差し伸べる。

 ビビアナはドロテアの意図が分からないままその手を取り立ち上がると二人は向かい合う。ドロテアがビビアナから手を離すと跪き、再度手を差し出す。


「ビビアナ公女、俺はずっとあなたをお慕いしておりました。思いを伝えることは許されないと諦めていましたが…あなたを誰にも渡したくない。あなたの隣に相応しい男になってみせます。どうか見ていてくださいませんか?」


 普段の口調を変えて求婚するドロテアと、それをうけて固まるビビアナ。

 そんな二人をグレンは邪魔にならないよう見ていた。先程のドロテアの言葉はこういう意味だったのかとグレンは納得する。

 ドロテアは跪いたままビビアナを見つめているが、ビビアナは自分の胸の前で手を握りしめて俯いている。突然のことで驚いたからだろう。自身もそうだからとグレンは一人で完結させる。

 ビビアナがどんな回答をするか気になるが、答えをだすまで時間がかかるはずだ。それまでこの空間に居るのはツラいし、長時間空気と徹するのも難しいなどと考えていた。


「……イヤです」


 ポツリと溢れた言葉は否定のものだった。

 予想の内に入れていても直に聞くと堪えるものがある。ドロテアは差し出した手を下げるが、ビビアナの手がそれを阻む。


「あなただけが頑張るなんてイヤ!」


「ビビアナ?」


「…私だってあなたのことずっと好きなの。我が儘を言っていい立場では無いことは分かっているの。でも、生涯側にいる人は自分で選びたい!ドロテアが私の側にいてくれるならどんなことでもする。二人で一緒に認めてもらえるようー」


 俯き涙ながらに自分の気持ちを言葉にするビビアナをドロテアは抱きしめる。

 途中で遮られたのが不満だったのか、「最後まで言わせてよ」とドロテアの胸の中でビビアナが文句を言っていた。

 ドロテアは彼女の不満も気にしていないのだろう。ただ、ビビアナを抱きしめている彼の眼には涙が浮かんでいた。



 二人だけの空間を作られ、気まずさが増した部屋に取り残されたままでいるグレンは悩んでいた。このまま二人が自分に気付くまでいるか、この空気をぶち壊して部屋から出ていくかーー





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