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26.




 あの後、話がまとまってからの二人の行動は驚くほど早かった。

 別件で席を外していた宰相が執務室に入るなり、グレンとヴィアの婚約発表の触れをすぐさま手配し、夜には国民の知るところとなった。

 ヴィアは話がまとまった後、自室に篭っていた。クロエが別の侍女から聞いた話だと、夕食の席は相当荒れたとのこと。

 グレンとヴィアの婚約を発表直前まで知らなかったイルマが、グレンに対してネチネチと嫌味を言い続ける。イルマを宥めるフィリップにもとばっちりがいき、国王がイルマを諌める。が、それでも止まらないイルマの嫌味と愚痴に、国王がキレてその場が凍りついたとのことだ。

 ヴィアはその話を聞いて、心底自室に篭っていて良かったと思い、明日の朝が平穏に過ごせるよう心の中で祈る。



 翌日、ヴィアの祈りが通じたのか朝食の席は至って静かだった。

 イルマの嫌味は昨日の国王の喝が効いたのか、ヴィアには向けられなかった。

 今日からまた暫くは王城へ戻らず学院で過ごすため自室で必要な物をまとめると、ヴィアは馬車が待機している場所へ向かう。

 ヴィアが着くと、先に来ていたフィリップが御者に荷物を預けていた。

 フィリップはヴィアに気付くと、ヴィアの荷物を取り御者に渡す。その一連の動きがスマートだったため、ヴィアは不覚にもときめいてしまった。


(ここが乙女ゲームの世界じゃなくて、従兄弟じゃなかったら絶対惚れてたな)


 ヴィアはフィリップが異性として優良物件であることを改めて認識すると同時に、フィリップに釘をさしておく。


「お兄様、お優しいのは分かりますが、人を選んでくださいね。私は従兄弟なので大丈夫ですが、中には勘違いする女性がいらっしゃるかもしれません」


 ヴィアの忠告にフィリップは少し驚いてから、分かったと頷くと、ヴィアに手を差し出す。


(本当に分かってるのかな)


 ヴィアはその手が馬車へ乗るためのエスコートだと分かると、フィリップの手に自身の手を合わせ馬車へと乗りこもうとするが、そこに居るはずのない人物を見つけるとその場で動きを止める。


「なぜ、グレンお兄様がいるのですか?」


 グレンがこの場にいるのがさも当然のような顔をして座っていた。

 しかも、グレンだけではなく、彼の専属執事のノエまでいる。


「後ろがつかえてるから早く乗って」


 グレンが口を開くよりも前に、ヴィアをエスコートしていたフィリップが言う。

 フィリップの言葉に従いヴィアは馬車に乗り込むとグレンの対面に座る。フィリップが乗り込むと、馬車は動き出す。

 ヴィアはもう一度目の前にいるグレンに何故いるのかと問いかける。


「学院長に挨拶するためだ。俺たちの婚約について不満がある者もいるだろうから、釘を刺すためにな」


 釘を刺すくらいなら婚約しなければいいのに、とヴィアは思っていたが、さすがに口にすることはしなかった。

 グレンの横にいるノエに視線を向けると、ヴィアの意図を理解したグレンが応える。


「ノエは暫くヴィアにつける。ノエは執事としてだけでなく、護衛としてもいけるからな」


「…護衛?」


 ヴィアはグレン言葉に首を傾ける。

 学院へ勉強しに行くのに護衛が必要なのか、という顔をするヴィアにグレンとフィリップは苦笑いを浮かべる。


「ヴィア、二人の婚約については僕も話を聞いているよ。君はドロテア公子よりも兄さんとの婚約を決めた。それを不満に思う者が必ずいるはずだよ。その者達がどういう行動をするか考えてごらん」


 幼子を諭すようにフィリップは言う。

 フィリップの言い方にヴィアは拗ねるが、少し考えると納得した表情をする。


「暫くはノエと共に行動するようにします」


「理解したようで何よりだ。自国の貴族達はすぐに行動に移す者はいないと思うが、ドロテアは違う。警戒はしておけ」


 グレンの言葉にヴィアは頷く。

 ヴィアが素直に頷いたのでグレンはフッと微笑む。

 グレンの笑みに不意打ちをくらう。ヴィアは顔が赤らむのを感じて窓の方へと思い切り顔を外らす。

 

(あー、心臓に悪い‼︎)


 ブラコンを卒業したはずなのに、兄(従兄)二人はヴィアをときめかせる行動をする。この短時間で既に二回ときめいてしまったヴィアは、念仏のように、「私はブラコンじゃない」と学院に着くまで唱えていた。

 ブツブツと同じ文言を繰り返すヴィアは、車内の何とも言えない空気に気が付かなかった。




私生活がバタバタしていたため、投稿が空いてしまいました。

お待たせしてしまいすみません…

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