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18.




 学院に入学して数ヶ月経った頃、教師が教室に入ってくるなり、教卓にある水晶を置いた。それはヴィアにも見覚えがあった。


「今日はこれを使って皆が自分の属性を知るとこから始めるぞ」


 教師はそう言って水晶に触れる。

 ヴィアや貴族達は既に自分の属性を知っているが、平民の子達は知らない者が多い。そのため学院では必ず生徒が自身の属性を知る授業を取り入れている。そして、その後自身の属性魔法を学ぶ授業も受けることになる。

 教師が順番に生徒を前に呼び、水晶に触れさせる。自分の属性を知らない者は期待と不安が入り混じった表情で触れ、既に知っている者は表情を変えずに触れていく。

 ヴィアの順番になり、教卓へと向かう。ヴィアは教師とクラスメイトに氷の属性を保持している事を知られないように心の中で祈りながらそっと水晶に触れる。水晶は以前と同じ光を放つ。


「王女は水と風だな。王女のように二つの属性を持つ者は他にも居るからなー」


 教師はヴィアの属性を確認した後、他の生徒に向けて言葉を紡ぐ。それは王族であるヴィアだけが特別ではないと教えるためだった。その心遣いにヴィアは感謝する。

 全員の属性を確認し終わった後、これからは定期的に属性別の授業があることを教師は生徒に告げる。二つの属性を持つ場合は交互に授業を受けるか、どちらかの属性に重点を置いて受けるかになると言われた。ヴィアとしては交互に受けるつもりだが、一応他の人の意見も聞いておこうと思い、こっそりエヴラールに魔法で手紙を出す。あとは、お昼にグレンから話を聞いてみることにした。

 授業終了の鐘が鳴り、ヴィアは席を立つとシルビアを伴ってグレンの教室へ向かう。さすがに食堂に行っているかと思ったが、グレンは何人かの女生徒に囲まれていた。その光景にヴィアは声を掛けるのを躊躇ったが、思い切って声を掛けることにした。


「お話中すみません。お兄様、相談がございますので、今日のお昼ご一緒してもよろしいですか?」


 他の生徒を刺激しないようにヴィアは低姿勢を心掛けた。女生徒達はヴィアの登場に驚き、グレンの周りからサーと離れていく。グレンは自分を囲っていた女生徒達がいなくなってホッとしていた。


「今日は俺の友人も一緒でもいいか?」


「勿論です!急にお邪魔してしまったのは此方なのですから」


 グレンの友人と言われた男性が会釈をする。挨拶は後でということになり、四人は教室から移動していく。

 食堂に着くと他の生徒から離れた席に四人は座る。話を聞かれて困る訳ではないが、念のために。


「本題の前に自己紹介といくか。ヴィア、シルビア嬢、彼は俺の友人のラウルだ」


「友人と言っていただけて光栄です。ラウル・ダルトワです。よろしくお願いします」


 ラウルはヴィアとシルビアに向けて挨拶した後、ヴィアとシルビアが順番に挨拶していき、時間も限られているので食事をしながら話をすることにした。


「で、ヴィアの相談は何だ?」


「お兄様は二つの魔法属性をお持ちですよね?属性別授業の時はどうされてますか?」


 グレンはヴィアの話を聞いて表情を変えた。どこか嫌なものを見るような顔をしていた。ヴィアとシルビアはその表情の意味が分からず、困惑していた。


「…受けていない」


「「えっ⁉︎」」


 グレンの言葉にヴィアとシルビアは同時に驚愕の声を上げる。交互に受けていると言われると予想していたヴィア達にはグレンの答えは予想外過ぎたからだ。


 「王女殿下、属性別の授業は普段交流のない別の学年も混ざって行われるのです。最初の頃は、グレン殿下も授業に参加されて居たのですが、回数を重ねる毎に、授業中にも関わらず殿下に言い寄ろうとする貴族令嬢が増え、卒業が近い貴族令息もそれに加わって授業どころではなくなったのです。教師や真面目に授業を受けたい者達のために、グレン殿下は属性別授業は受けないと決められました。その時間はどこで何をしているかは私も教えてもらっていません」


 ラウルがグレンに代わり経緯を説明する。ラウルの話の内容にヴィアとシルビアは絶句していた。開いた口が塞がらないとはこの事だ。ラウルの話だとグレンに取り入ろうとした貴族達はその後、真面目に授業を受けないのなら退学させる、親に抗議すると教師に言われたため大人しくしているという。さすがに退学は外聞が悪く親からも怒られることを恐れて真面目に授業を受けている。


「フィリップお兄様は大丈夫なのかしら…」


 ヴィアはもう一人の兄(実際は従兄弟)を心配する。


「フィリップは大丈夫だ。俺の時のようにしないため、教師が事前に国王と王妃に相談して、王妃から貴族達に警告していたから。警告を無視した者には容赦なく対応するように教師達にも煩く言っていたからな」


 グレンはそう言うとヴィアの頭を撫でて、自分の好きなようにしたらいいと告げる。ヴィアはグレンの言葉に頷くが、グレンは大変な目に遭い、まともに授業も受けれなくなったのに、知らずに軽く話を振ってしまったことに申し訳なくなった。


「グレン殿下、王女殿下が可愛くて仕方ないのは分かりますが…あまり人前でそれをされるのはどうかと…」


 ラウルは無意識にタラシを発動させるグレンを諌める。グレンはどこがダメなのかよく分からないという顔をしていた。ラウルはため息を吐き頭を抱える。そんなラウルの様子にヴィアとシルビアは同情する。


「お兄様、早く婚約者を決められてはどうですか?そうしたら女生徒に囲まれることも無くなると思いますから」


 ヴィアの言葉にラウルとシルビアは頷いて同意する。が、グレンは属性別授業の話を振った時より嫌そうな顔になる。既に貴族令嬢に対して嫌悪感があるのか、婚約者の件は触れられたくなさそうだった。グレン以外の三人は彼の心情を察し、婚約者の話を振るのをやめた。




 その日の夜、エヴラールから交互に受けるべきという内容の返事が届き、ヴィアは属性別授業を交互に受けることに決めた。



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