表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/60

16.



 あれから五年の月日が経ち、ヴィアは十歳になった。今日はヴィアの誕生を祝う宴が王城で開かれていた。城内のホールに集まった貴族達は、壇上の席、主役であるヴィアを含む王族が座る場所が空いているので、王族達が来るまで挨拶という名の世間話を始めていた。

 

「国王陛下のおなり」


 執事の一人がホールに響き渡る声で言うと、世間話をしていた貴族達は途端に話を止め、王族達がホールに入る扉の方を一斉に向く。

 扉が開かれると、国王を始め王族達が順にホールに入ってくる。王族が壇上の席の隣に立つと、国王が宴の開催について短く話す。主役であるヴィアも一言感謝を述べて宴が始まる。

 王族達の元には挨拶と祝いの言葉を伝えに貴族達がひっきりなしにやって来る。国中の貴族達が宴に参加しているので、挨拶に来る人数は多く、それが終わる頃にはヴィアは疲れきっていた。休憩をしようと思い、ヴィアはルカを伴って席を外す。


「もー疲れたー…」


 庭園にあるベンチに座りヴィアはぐったりとしていた。ルカはヴィアが風邪をひかないよう、肩掛けをそっと掛けると、ヴィアの姿勢を注意する。ヴィアはすぐに姿勢を正す。

 最近のヴィアはより王女として相応しい行動を心がけて過ごしていた。十歳になるからということだけではなく、今年から魔法学院に通うため、同級生達の前でボロを出さない為でもあった。なので、少しでもらしからぬ態度をした場合、クロエとルカに注意するようお願いをしていた。その甲斐があって以前よりはマシになったが、今のように気を抜くとだらけてしまったりする。


「今日は貴族の方が大勢居られますので、気を抜かないようにしてください」


 ルカもヴィアが疲れているのは見て分かるが、ヴィア自身が頑張っているのを知っているので、無駄にはしてほしくはなかった。ヴィアはルカの言葉に頷き、王女然としたまま庭園でしばらく休憩してからホールへと戻っていく。


 ヴィアがホールに戻ると、既にダンスが始まっていた。少し長く休憩しすぎたかと思ったが、始まっているのならしょうがないとも思い、ヴィアは自身の席に戻っていく。と、ヴィアの前にグレンが立ち、手を差し出してきた。


「ヴィア、俺と一曲踊ってくれますか?」


 グレンの言葉に頷き、ヴィアは彼の手の上に自身の手をのせる。グレンはヴィアをエスコートしてホール中央までいくと、さっきまで踊っていた人達が踊りを止めて、サッと場所を空けていく。グレンとヴィアは曲にのせて踊り始めた。二人を囲うように佇む貴族達は、二人のダンスに称賛の声を小さな声で上げていた。

 ダンスが終わりお互いに礼をする二人に拍手が贈られる。二人は貴族に一礼すると拍手を背に自身の席に戻っていく。


「今日のドレスはいつもと違うな」


「十歳になったのでチャレンジしてみました」


 席に戻る途中にグレンはヴィアのドレスについて尋ねる。

 ヴィアが普段着るドレスは首元までレースやリボンなどの飾りがついたもので、宴の場でもあまり肌を露出させないものばかりだった。今日は肩を出した、ヴィアとしては初めて着るタイプのドレスだ。この日のためにクロエと裁縫師が長々と議論していたのをヴィアは思い出した。

 グレンはヴィアをもう一度頭から見ると、似合ってるとさらりと言いはなつ。グレンの言葉にヴィアは頬を染めながらお礼を言う。

 席に座ろうとしたら国王から呼ばれたので、ヴィアは国王の元に行く。国王はヴィアが自身の元に来ると、立ち上がりヴィアの肩に手を置く。そして、ヴィアにしか聞こえない声で約束の時だと告げる。ヴィアはその言葉にハッとなり、国王を見る。国王からは微笑みが帰ってきた。


「ここで、私から皆に伝えたいことがある」


 国王はそう告げると会場内に居る魔導師団団長に目線を送り、団長が魔法解除を派手に見せるため会場中に色とりどりな花びらを降らせる。会場中がその花びらに目を奪われていた。花びらを見ていたある一人が、国王の横に居るヴィアを見て声をあげる。それに呼応するかのように会場中がざわついていく。会場内の者がヴィアの瞳の色を正確に認識したのを見て、国王は言葉を発する。


「皆には黙っていたが、ヴィアの本来の瞳は紫だが、魔法で金と見えるようにしていた。この子を守るために私と先代国王で決めた」


 国王の言葉に会場内にいる者は何も言わなかった。子を守るためと言われれば、会場内にいる貴族達は親として国王の言葉を理解した。


「そしてもう一つ……ヴィア・ヘーゼルダインは私の子ではない」


 国王の発言に会場内はさらにざわついた。第一王女として扱われていたヴィアが、国王の子ではないとなると一大事である。

 横にいたヴィアも突然知らされた事実に顔面蒼白になっていた。恐る恐る国王の方を向くが、表情を見ることはできなかった。


「…ヴィアは私の弟、レオンとミシェル・レイン公爵令嬢の子である。公爵令嬢がヴィアを出産後亡くなったこと、レオンが病弱であったため私の子として皆には伝えていた。皆を騙していてすまなかった。明日の朝に国民にも向けて触れを出す」


 国王はそう言うと頭を下げる。会場中は未だ話の内容が内容だけにざわついたままだった。

 


 その後も国王は宴を楽しむよう言う。貴族達は表面上体裁を保っていたが、ヴィアはそんな気になれず、すぐに会場を後にした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ