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15.



 最初の合同訓練からヴィアの髪をルカが魔法で結うことになった。その話をクロエにすると猛反発したが、最終的にルカが魔法で結っても、クロエから合格点を貰えないとすぐにクロエがやり直すということになった。

 今日もクロエから合格が貰えなかったので、ルカは落ち込んでいた。最初に比べたら大分良くはなっているが、クロエなりの意地悪も含まれているため、なかなか合格にはならない。ヴィアはルカを励ますしか出来なかった。


 魔法と剣の訓練を今日はお休みしてヴィアは書庫に来ていた。

 以前借りていた叔父の手記をヴィアは読み終えたが、意図的に読めなくしている箇所があることにヴィアは気付いた。恐らく魔法で読めなくしているので、書庫にその魔法の手掛かりがないかヴィアは探していた。

 本来ならここまで必死に探す必要もない。叔父の手記は病弱な自分が嫌いだという内容が殆どだが、その中である女性に会えて良かったという内容が書かれていた。女性の名前は分からないが、読めなくしている箇所はその女性に関係がありそうだった。叔父と出会った女性は誰なのか、どんな女性だったのか気になりヴィアは必死に本を探していた。


 そんなヴィアの様子を国王は密かに見ていた。




◇◇◇◇◇◇◇




「今日こそは合格じゃないでしょうか、クロエ」


「いーえ、ここの結いが甘いです!合格はあげられません!」


 風魔法でヴィアの髪を綺麗に結いあげたルカはどうだ、とばかりにクロエへ顔を向ける。自信満々なルカに対してクロエはダメ出しをする。そんな二人の会話をヴィアが楽しく見るというのが日常茶飯事になってきた。

 ヴィアの後ろで話し合う二人を鏡越しで見ていると、ふと違和感を覚えた。ヴィアは鏡の自分をジッと見つめると指を鳴らす。が、特に変わらないので気のせいかとヴィアは思ったが、鏡に映る自分の目の色が金色から紫色に変化していることに気付いた。


「えっ⁉︎」


 ヴィアの声に言い合いをしていたルカとクロエは振り向き、ヴィアの元へと駆け寄る。


「ヴィア様、どうかされました……その目は…?」


 クロエがヴィアを心配して顔を覗き込む。が、ヴィアの目の色が変わっているのに気付いて驚愕の表情を浮かべる。ルカもヴィアの目の色が変わったことを知り驚いていた。

 突然変わった目の色に三人ともが困惑していると、部屋の扉がノックされた。クロエがすぐに対応するため冷静さを取り戻して扉へ向かう。扉を開くなり部屋の中に国王が入ってきた。


「お父様⁉︎どうしたのですか?」


 突然現れた国王にヴィアは驚く。国王の後には魔導師団団長とエヴラールが続いていた。

 国王はヴィアの頬に手を当てると、ジッとその顔を見つめる。ヴィアはどうしたらいいか分からず、ただ国王を見るしかなかった。


「ヴィアよ、何故魔法に気付いた」


 国王の問いかけに魔法とは何のことだとヴィアは首を傾ける。国王とヴィアの様子を後ろで見ていたエヴラールが説明を始める。


「ヴィア様にはお産まれになってから今まで魔法が掛けられていました。それが、今しがた解除されたので陛下と我々が此方にやってきたのです」


 ヴィアはエヴラールの説明を聞き、さらに困惑するが状況を理解しようと頭を働かす。自分には生まれた時から魔法がかけられていて、それを解いてしまったのだと。先程、鏡を見て感じた違和感は魔法のせいだった、それを解いたから目の色が変わったのだと。その結論に至った瞬間、ヴィアは部屋に入ってきた瞬間の国王の様子を思い出す。まるで壊れ物を扱うような。


「……私の目の色は…紫色だったのですか?」


 ヴィアは恐る恐る口を開く。返答は返ってこないが、沈黙は肯定を表していた。ヴィアは何故教えてくれなかったのか、と国王に向けて呟く。


「紫の目は国民に取って希望を持たせるが、争いの神輿にも担がれやすい。お前が産まれてすぐにその事に気付いた私は先代国王と話し、魔導師団団長に魔法をかけるよう頼んだ。お前が何事にも流されず、自分の意思で生きていけるようになった時に話すつもりだった」


 国王の言葉にヴィアは何も言えなかった。ヴィアは国王に何故教えてくれなかったと尋ねたが、教えられると思われることを自分はしていなかったと気付いた。今までフィリップに付き纏い、王女としての振る舞いをしてこなかったヴィアに、国王が重要なことを教えるはずがないと。

 前世の記憶が戻ってからヴィアは自分なりに変わろうとしていたが、それでも国王からの信頼を得るにはまだ足りなかったのだ。その事実に悔しさでヴィアは俯くが、国王がそれをさせなかった。


「ヴィアよ、今はまだ待て。お前が以前とは違うことも私とて理解している。こちらの準備が整った時、国民にも話をする。それまではまだ今日のことは他言無用だ」


 国王は両手でヴィアの頬を掴んで自身の方へと向ける。悔しさを滲ませるヴィアの表情に真摯な言葉が降り注ぐ。それは未来の約束。ヴィアは弱く、はいと返事をする。


「…それと、お前が今調べていることについてもその時話す」


 国王はヴィアから手を離すと切なそうな表情を一瞬見せる。ヴィアは何故知っているのかと尋ねるが、その返答はなかった。

 国王が魔導師団団長に再度魔法をかけるよう言うと、団長はヴィアに魔法をかけていく。その間、国王はヴィアの専属であるルカとクロエに、ヴィアの目の色については他言無用だとキツく言い聞かせていた。


 ヴィアに魔法をかけ終わった後、国王が魔導師団団長とエヴラールを引き連れて部屋から去っていくと、ルカとクロエが脱力し倒れる。話の内容と国王からの威圧が原因だった。ヴィアは二人を労るべく優しい言葉をかけていく。

 ヴィアは今日、部屋から出なかった。




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