24時間戦えますか♪
会社の外で作業をしていると背後から
「今絶好調だろうね」
社長が一言言ってその場をそそくさと離れて言った。
背後から話しかけられたことと、社長がすぐに離れてしまったことで私は言葉を発することなく社長の後ろ姿だけを見ていた。
別の日の昼ごろ。
私は海にいた。
海を眺めながら、メイド喫茶をどのように回るか思案していた。
N市にはメイド喫茶が多数あり、どこのメイド喫茶を回るのがいいか。
2週間に分けて回るかなど考えていた。
そんな時、1人の男性が私に近づいてきた。
左足が悪いようで引きずっているかのように歩いている。
右手には缶ビールを持っていた。
近づくにつれて男の顔がよくわかった。
70台くらいの人で見事な職人の顔だった。
長年仕事をしていると人はその職種の顔になる。
営業なら営業の顔。職人なら職人の顔。商売人なら商売の顔。
自分の仕事の生き様が顔にあらわれると。
40になろうが50になろうが甘っちょろい顔の人もいる。
仕事にも生きることにも真剣になれず、ただ生きてきた人間には出せない顔でもある。
「今何歳だ?」
「32です」
「そうか。今お前絶好調だろ?」
社長と同じ言葉を言われて私は少し驚いた。
「ええ、今絶好調です」
「そうだろうな」
その一言を言った後、職人の顔を持っているおじいさんはビールを飲みながら私から離れた。
なんなんだあれは。
それを言うために私に近づいてきたのか。
確かに調子がいい。
昔のCMに24時間戦えますか?というCMがあった。
20代の頃なら24時間戦えるわけないだろと思っていた。
だが、今24時間戦えますか?と問われれば私はこう即答する。
戦えます!!
もうすぐ休みだ。
早くN市に行ってメイド巡りを楽しまなければ。
頭の中はメイドでいっぱいだった。
だから、その時は気がつかなかった。
見ただけで、なぜ私が絶好調だとわかったのかを。