第一話・少年と、少女
「作戦開始まで、あと10秒…10分内に、敵を全滅させろ、とのご通達だ。」
銀色の髪の少女が言った。隣で座っていた、栗色の髪の少年が立ちあがった。
「…了解っと。じゃ、行きますか。」
二人は、一瞬にしてその場から消えた
「お。お疲れ、クレア。」
10分後。銀色の髪の少女―クレアが、栗色の髪の少年との合流ポイントへ到着した。
「ライマ…。早いな、いつもより…」
栗色の髪の少年―ライマは、めを丸くした。
「そうか?おれはそんな感じしてなかったんだけどなぁ」
ケラケラと笑う。一方のクレアは、にこりともしないで言った。
「私の方が手間がかかったからか…。」
「そりゃぁ大変だったなぁ …さ、戻ろうぜ!」
「…あぁ、そうしようか。」
ライマが手を差し出す。クレアがその手を取る。
「んじゃ、いくぜ!」
そう言うとライマは札を出した。それを思い切り地面にたたきつけると、再び二人は消えた。
「リオラさん!!」
「んぁ?ああ、ライマとクレアか。終わったのか?」
眼鏡をかけた長身の男―リオラが振り返った。
彼は二人の、いわゆる上司、(のようなもの)である。
「敵は全滅させました…。」
「ん、二人ならできると思ってたからなぁ〜!よぉし、休め休め!!」
リオラにさっさと休めと言わんばかりに背を押された(いや…突き飛ばされた、のが正しい)ので、二人は寮に歩き出した。
どうやら他のチームは戻ってないらしく、寮の中は薄暗く、物音すらしなかった。
部屋の前でライマが言う。
「クレア、頭洗って、血、ちゃんと落とせよ。」
「分かっている…」
「じゃ、またな。」
「…。」
パタン、とドアが閉まる。ライマも、自室に入った。
「あんなあからさまに無視しなくてもなぁ」
シャワーを浴びた後、ライマはベットに寝転がって、ひとりごちた。
―ああ、これで何度めだろうか。
クレアとチームを組むことになって、早2年だ。
それなのに彼女はおれの眼を見ようともしない。態度もそっけない。
…いや、おれの眼を、というより…
クレアは鏡を見るのが嫌いだった。自分の髪と瞳の色が見えてしまうから。
血が付くと目立つ銀髪、血のように紅い瞳。
”彼”は綺麗だ、と褒めてくれたが、その”彼”も今ではどこにいるのか分からない。
それどころか、生きているのかも分からない。最悪の事態もあり得ないことはない。
「早く帰ってきて…――。」
クレアの呟きは、闇に消えた。