70話 アイス
5歳の女の子ミヨは近所の一歳年下の女の子チサとミヨの家で遊んでいた。母同士もおしゃべりをしている。
クーラーは効いているものの暑い室内、ミヨは提案する。
「チサちゃん、アイスたべようか」
「うん」
チサも嬉しそう。
二人はそれぞれの母親にアイスを食べて良いか聞いてから、台所へ行く。
冷凍庫の引き出しを開けるとミヨはチサに聞いた。
「チサちゃんアイスどれにする?」
「これ」
チサが選んだアイスを見て
(やっぱり)
ミヨはにっこりする。
(チサちゃん、そのアイス好きよね)
ミヨはときどき家に来るチサのお菓子やアイスの好みを把握して購入し、食べたときは次のお買い物で母に買ってもらって補充すると言うことをマメにしていた。
食べながらミヨは質問する。
「チサちゃん、そのアイスすきなの?」
「うん、すき」
チサはニコニコ答える。
「なんですき?」
ミヨもニコニコしながら、ある程度『答え』を予想しながら聞いた。
『おいしいから』
『バニラあじがすきだから』
だがチサの答えはミヨの予想から外れたものだった。
少し考えてからチサは言った。
「ながいから、すき」
「??」
ミヨは一瞬意味がわからなかった。
長い?
チサの食べているアイスは袋状のもの(チアパック)に入っているアイスを吸うように――飲むように――食べるものだが、同じく吸う――飲む――系アイスであるチューペットのように『長い形状』のものと言うわけではない……
と考えてから
『わかった』
ミヨはひらめいた。
チサの『ながいからすき』と言う意味は。
袋状のものに入っているから、溶けて落ちたりしないから、
『溶けても大丈夫』
だから
『溶けるからと急いで食べなくてよい』
なので
『長い時間をかけて食べられる』
だから
『長いから好き』
(なるほどなあ……)
ミヨは感心した。
ただ単に溶けることを気にせずゆっくり味わって食べたいと言うことなのかもしれないが、ミヨは考えを巡らした。
(子どもはすぐおなかが減るから、長い時間かけて食べられるものが良いと思うのかもしれないわ)
ミヨ自身はおなかが減っても大人の精神?(経験? 知識?)で普通に我慢できるが、普通の子どもにとってお腹がすぐ空くとはなかなかつらい状態で、子供なりにいろいろ試行錯誤しているのかもしれない。
長い時間をかけて食べられるものを選んで食べると言うのもその工夫の一つなのかもしれない。
(『食べる時間が長くとれるから好き』と言う発想はなかったな……)
感心するような、なんだかいじらしいような気持ちになるミヨだった。




