67話 ミミズ(※ミミズご注意)
5歳の男の子シュンは保育園の小さな畑で、ジョウロで野菜に水をかけていたが……
(おや)
ある生き物を発見して、
「ハナちゃん!」
同じく畑で野菜に水をあげている、同じ組の女の子の名前を呼んだ。
名前を呼ばれたハナがやって来た。
「なあに、シュンくん」
不思議そうなハナに、シュンは畑を指差した。
「ミミズ」
ハナはシュンの指差す方を見て、一瞬固まって、後ずさりして、
「きもちわるい……」
去って行った。
(あれ……?)
シュンは首を傾げた。
(ハナちゃん、
『ミミズ、かわいい』
って以前は言っていたのに)
去年のことだろうか?
確実にハナは『ミミズかわいい』と言っていて、ミミズの絵を描いていて、シュンは
(ミミズが可愛いとは。
ハナちゃんは変わった女の子だな)
と思ったものだったが……
シュンも、ハナが『本物を見たことがないから、ミミズが可愛いと思える』と言う可能性も考えていたものの……
実際そうだったのかもしれないが。
シュンはミミズを見つめた。
(まあ。俺も可愛いとは思えんが……
別に嫌いでもないが)
※※※
教室に戻った後、
「ハナちゃん」
シュンはハナに聞いてみた。
「ミミズ、いやだった?」
「きもちわるかった……」
ハナが答えるのに、
「ごめんね」
シュンは謝った。
「ハナちゃん、『ミミズかわいい』ってまえ、いっていたから……」
ハナはよくわかっていない表情になった。
シュンは謝罪してハナと別れた後、考えた。
(ハナちゃん、『ミミズ可愛い』と言っていたこと、忘れちゃったのかな)
『ミミズ可愛い』は、実物を見て『やっぱり可愛くない』と変心した可能性もある。
しかし、実物を見た結果の変心ではないとしたら……
(俺も、ハナちゃんが
『ミミズかわいい』
と言ったときは、
『えっ!』
と言ってしまったな……)
ハナのミミズへの変心は、
『ミミズかわいい』
と言う発言後の、大人による、
『えっ。嘘!』
『ミミズが可愛いとは……変わっている』
みたいな、『引く』態度を見た結果なのでは?
『私は可愛いとは思えないなあ……』
みたいな態度を何人もの大人に取られた結果、
『ミミズきもちわるい』
と、ハナ自身も思うようになったのでは……
と、そんなことを考えたシュンだった。
『ミミズかわいい』
とは面白い女の子だと思っていたので、そんなハナですら、他人の影響から自由ではないのだな、と思ったりするのかもしれない。
(俺も子どもへの発言は気を付けなければな……)
と思うシュンだった。




