62話 絵3
5歳の男の子シュンは、保育園で絵を描いていたが……
「……」
隣の席の子の、絵をチラリと見る。
前の席の子の、絵をチラリと見る。
(皆、頑張って描いているなあ……)
自分の描いた絵を見る。
木。地面。空。の『線』が描いてある。
まあ、そこまでは良いのだが……
(ふう……)
シュンは思った。
(塗りつぶすのが、面倒くさくて、適わん)
子どもの絵とは、一生懸命『塗りつぶして』あるものだ。クレヨンなどで。
絵の枠部分? だけを描いて終わりと言うことはない……
(塗り絵なら特に面倒くさいと思わないのだが……)
塗り絵は『枠内を塗りつぶす』だけしていれば良いから、特に面倒くさくない。
しかし、『絵を描く』とは……
(まず枠を――線を――描く。
それから、中を塗りつぶす。
……面倒くさい)
どうも『二つ以上の作業』があると自分は面倒くさいようだとシュンは思う。
(他の例……漫画を読む。←絵と字の二つを見なければならないから面倒くさい)
しかし。
(一人だけ、やけに白い絵を描くわけにも、いかんな)
シュンは仕方なく、『塗りつぶし作業』を始めるのだった。
(空の青……やっと塗りつぶした。
次は、木の葉の緑。幹の茶色。
それから地面の茶色。
……やれやれ。先は長い)
シュンはまた、近くの席の子どもの様子を観察する。
子どもは面倒くさいと言う様子を見せずに、普通に塗りつぶす作業をする。
偉い、と思った。




