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61話 絵2

 5際の女の子ミヨは保育園で絵を描いていた。

『クマ』の絵である。


(できたわ)


 ミヨは自分の作品を見つめた。


 クマのデフォルメ絵としてありがちな感じの、可愛いクマである。


(まあまあね……)


 ミヨは思った。


(でも私の絵。

やっぱり『味がない』のよ)


 ミヨは両親が以前、

『子どもの絵は味がある。あざとくないヘタウマ』

 と言っていたことを思い出した。


(やっぱり、まだあまり何の影響も受けていない子どもが描いた絵は可愛いのよね……)


 そこでミヨは向かいの机で同じく絵を描いているレイナの絵に視線をやった。


(!?)


 ミヨはレイナの絵を見つめた。


 レイナはミヨと同じく『クマ』を描いていたが……


(レイナちゃん、リアルなクマを描いている……)


 ミヨの描いたような『デフォルメ可愛いクマ』、『テディベア系クマ』ではなく、レイナは大きな『リアルなクマ』を描いていたのだ。


 もちろん『リアル』と言っても5歳児なりの『リアル』だが……


(すごいわ、レイナちゃん……)


 ミヨは自分の描いた『可愛いクマさん』の絵を見つめた。


(私、5歳の女の子は『可愛いもの』を描くものと思い込んでいたわ……

あんな絵も描くのね)


『5歳児ってスゴい』とミヨは思った。



※※※


 そのときミヨたちの机の近くにシュンが来た。


 シュンはレイナの絵を見て、『ほう……』と言った風に目を見開き、感心したような表情になった。


「とってもじょうずだね、レイナちゃん」


 シュンは頷きながら言った。


「リアルなクマだね!」


「クマは『がおー!』ってこうげきしてくるんだよ」

 レイナは真剣に言った。 


 シュンはレイナに頷き返し、ミヨの絵に視線を移した。

 自分の絵を見るシュンをドキドキしつつ見守るミヨ。


 シュンはミヨの絵を見ると目尻を下げて言う。


「ミヨちゃんのクマはとってもかわいいね!」


「えへ……」ミヨは照れた。

「ありがとう、シュンくん」


(子どもって優しいな)


 とミヨは思った。



※※※


 シュンの方は……


(レイナちゃんは絵の才能があるかも知れんな。

この歳からこんな、写実的な絵を描くとはな)


 とレイナのことを感心していた。


 そしてミヨのことは……


(ミヨちゃんの絵は『アニメ』などの影響を受けているな。

しかし影響を受けていても、子どもならではの独特の良さがある)


 それから『子どもの絵は良いな』と言ういつもの結論になった。


 そして


(しかし子どもとは絵が上手いものだなあ……

アニメで子どもが描いた絵を紹介しているものがあるが、

『こんな上手い絵を保育園児や幼稚園児が描けるのか?』

と以前は思っていたが。

今は描けるんだな、と納得している……)


 と言う、いつも『子どもの絵について考えるときに決まって繰り返す思考』を今日も繰り返した。

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