60話 だるまさんがころんだ
5歳の男の子シュンは保育園で『だるまさんがころんだ』を皆としながら、思い出していた。
1年前初めて『だるまさんがころんだ』をしたときのことを。
※※※
当時4歳のシュンは、色々な年頃の子と同じ部屋――遊戯室――で遊んでいたが……
5歳の子の提案『「だるまさんがころんだ」しよう!』に乗った。
「『だるまさんがころんだ』、どうやるか、わかる?」そう聞かれたので、
「わかる」自信満々に答えた。
(『現世』でするのは初めてだが)
シュンは思った。
(『だるまさんがころんだ』はわりとシンプルなルールだから、憶えているぞ)
と言うわけで4歳~6歳の『だるまさんがころんだ』を知る子が集まり、『だるまさんがころんだ』を始めた。
皆が言う。
「はじめのいっぽ!」
(そう言えば、そう言うんだったな)
シュンはホッコリした。
そして……
鬼が、皆に背中を向けながら言う。
「だるまさんが……ころんだ!!」
シュンはピタッと身体を硬直させた。
しかし……
(おや……?)
シュンの周りの子ども達が一斉に『ズコーッ』とその場に転がるではないか!
(……?)
鬼が「シュンくん、アウトー!」と言った。
「えっ」
(ちゃんと、ピッタリ、止まったのに……)
『まさか』と思って、近くに転がっている同じ組の子を見ると、その子は得意気に言った。
「シュンくん。
『だるまさんがころんだ』といったら、ころばなきゃ!」
(ああ、やっぱり、そうか……)
皆が転んだ時点でシュンにも予測ができたのだ。
(ちょっと俺が知っているルールと、違うんだな)
「シュンくん、こんかいはみのがすけど」鬼が得意気な優しい調子で言った。
「つぎはちゃんと、しじにしたがって」
「うん!」シュンは素直に頷いた。
それから鬼はシュンから、その後ろへ視線を移した。
「ミヨちゃんも」
シュンはその鬼の言葉に振り返った。
そこには立ったまま固まった、照れた顔のミヨがいた。
(おお……)
シュンはホッコリした。
(どうやら俺と同じ間違いをした4歳児がいるぞ……)
※※※
5歳になった今、シュンは『だるまさんがころんだ』の鬼をしている。
「だるまさんが……ころんだ!」
そう言うと、皆一斉に転び出す。
「だるまさんが……ほんをよんだ!」
本を読む仕草をする。
「だるまさんが……おちゃをのんだ!」
お茶を飲む仕草をする。
(皆が一斉に、同じ『真似』をする。
おもしろいし、可愛い)
シュンはホッコリしながら、皆を見守った。
(ミヨちゃんも、一生懸命、やってくれているな)
ホッコリ。
※※※
一方……
「だるまさんが……あぐらをかく!」
「だるまさんが……せのびをする!」
「だるまさんが……しんぶんをよむ!」
(ふふ……)
シュンの指示に従いながら、
(シュンくんの『だるまさんがころんだ』って。
何か『渋い』のよね)
ミヨもホッコリしていた。




