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58話 『かわいそう』

 5歳の男の子シュンは祖父母とショッピングモールを歩いていたが。

 足を止める。


 シュンの視線の先にはガラスケースに入った犬や猫たちがいた。

 ペットショップがあるのだ。


 ペットショップのガラスケースの前には、何人もの子どもたちが集まって、中を覗いていた。

 何メートルかに及ぶガラスケースの中の犬猫たちを見るのに、何度も往復する子どももいる。


 子どもたちは可愛い犬猫に夢中だ。


 シュンも遠巻きにペットたちを見て、もちろん『可愛いな』と思ったが……


(しかし。

かわいそう、とも思うのだ。

勝手な考えかもしれんが)


 狭いガラスケースの中。

 お友達と思われる2匹の犬がじゃれ合っていたりするのは、微笑ましいが……。

 隅の方でダルそうに寝そべっている犬や、お尻を向けて動かない猫を見ると『かわいそう』と思ってしまう。


(たぶん俺は昔の人間だから。

具体的には憶えていないが、『動物の放し飼い』の光景が当たり前だった頃の記憶がきっとあるのだ)


 だから『かわいそう』と思ってしまうのではないか? とシュンは考えた。


 しばらく遠巻きにペットショップのガラスケースを眺めた後、シュンと祖父母はペットショップから離れた。


 歩きつつ祖母が言う。


「シュンくん、犬も猫も、可愛かったね~」


「うん!」


(確かに可愛かった)


 とシュンが思っていると、祖母は今度は祖父に話しかけた。

 ペットショップから大分離れたところで。


「でもね、私、ああ言うところにいる犬とか猫、かわいそうと思っちゃうのよ。

元気なら良いのよ?

でも、狭いところにぐたーっとしているところを見ると、かわいそうだなあって、見ていられないの」


「かわいそうだよな」


 と祖父も同意した。


「ウチの近所の、犬や猫の方が幸せだと思うよ。

散歩に連れて行ってもらえる他も、まだ行動範囲が広いだろう」


(おお。

おじいちゃんとおばあちゃんは俺と同じ感覚ではないか)


 とシュンは思った。


(年齢に関係なく、皆にある感覚かも知れんな)



※※※


 シュンは帰宅後に、両親にペットショップで犬猫を見た話をした。


「可愛かったでしょ」


 と母はニコニコ言う。


「うん!」


「あそこ、お母さんも行くたび、見ちゃう。

可愛いもんね~」

 

 そこでシュンは言ってみた。


「でも。

おじいちゃんとおばあちゃんは『かわいそう』っていっていたよ」


「えっ」


 と母は丸い目をする。

 父も、今までは聞き流す調子であったのに、シュンを見た。


「かわいそう?」


「せまいところにいるの、かわいそう、って……」


 そうシュンが言うと、両親は顔を曇らせた。


「そうよね。

確かにかわいそうよね。

『可愛い』と思ってつい見ちゃうけど、かわいそうよね……」


「まあ……かわいそうだよな。

売れなかったらどうなるんだろう?

とか思うし……」


 シュンは両親の複雑そうな顔を見て思った。


(やっぱり世代関わらず皆にある『感覚』なんだな。

育ったときの環境や年代などの経験の差でその感覚に至るまでの時間差みたいなものはあるかも知れないが……)

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