57話 物語
5歳の男の子シュンは保育園から絵本を借りて帰った。
母がカバンに入っていた『一寸法師』の絵本を取り出す。
(相変わらず、いつもの趣味ね)
シュンの通う保育園は土日前になると絵本を貸してくれるのだが、シュンの借りてくるものはいつも『ザ・昔話』と言うものなのだ。
(もっと『ぐりとぐら』みたいなものを借りてこないのかしら?)
母は自分が子どもの頃に読んだ代表的絵本を思い浮かべた。
それから
「ねえ、シュンくん。
他のお友達はどんな絵本を借りるの?」
と聞いてみる。
シュンは
「ミヨちゃんは『はちかつぎひめ』かりてたよ」
母は『へえ~』と言う顔をした。
(『鉢かつぎ姫』か)
『日本版シンデレラ』とも言われる昔話である。
(今の子、って案外、昔の物語、好きなのかな……)
いや、きっと今も昔も面白い『物語』にさほど変わりはないんだろうな、と母は思った。
※※※
シュンは夜になるとリビングで『一寸法師』の絵本を広げた。
(うむ)
ほぼ知っているストーリー展開だな、と思う。
細部は違うが。
「シュンくん面白い?」
「うん!」
(ほぼ知っているストーリーだが、それなりに面白いのだ)
復習、と言う感じだとシュンは思う。
(どうも読んだことがない『新しい物語』は読むのが億劫でなあ……。
大体あらすじを知っていたり、予想がつく昔ながらのものばかり読んでしまう)
しかし脳トレのためにも読まなければならないとも思い、シュンは保育園ではそう言う本も読むのだ。
家では読まないけど……。




