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56話 フランボワーズ
5歳の男の子シュンの母が嬉しそうに言った。
「フランボワーズのケーキ買ったの」
シュンと父は『?』となった。――『ふらんぼわーず?』
出されたケーキ――ピンク色――を一口食べる。
シュンは『?』と思いつつ、思ったままのことを言った。
「いちごのあじ……」
「そうよ」
と母はニコニコ言う。
「フランボワーズはいちご。
『木イチゴ』よ」
(木イチゴ!)
シュンの頭に『木イチゴの木』が思い出された。
そしてその味――木イチゴの実――も、何となく思い出された。
木から直接摘んで食べた味……。
(この記憶。
おそらく前世の記憶だ)
と思った。
何故なら木イチゴの木なんて今までに――5歳までに――見たことがないと思うから。
きっと前世には身近にあって、よく食べていたのだ。
脳裏に浮かんだのは前世の光景なのだ――木イチゴのある風景。
(いつ、どんなキッカケで、どんな記憶が蘇るか、わからないものだなあ)
シュンはフランボワーズのケーキを食べながら思った。
(『ふらんぼわーず』で何かを思い出すとは。
食べる前には全く予想しなかったなあ……)




