55話 ヤモリ (※ヤモリご注意)(読み飛ばし可)
5歳の男の子シュンは同市内だが山の近くにある母の実家――祖父母宅――にいた。
窓をジッと見つめる。
そこには『ヤモリ』がいた。
白い腹を窓にくっつけている。
今は夜である。
ヤモリは家の電気の光に集まった虫を食べるために窓にひっついているのだ。
(食べた……)
急に歩いて、ペロッと虫を食べる……。
それが見たいわけではないが、動くヤモリを見るのは嫌ではなかった。
興味深い、と言うか。
しかし。
「きゃっ」
後ろで母の声がした。
「ヤモリ?」
シュンは頷きかけた頭を、傾げることにした。
5歳児が『ヤモリ』を知っているだろうか? と思ったのだ。
「わー……」
母はブラインドの紐に手をかけた。
どうやら『ヤモリ』の腹が見たくないのでブラインドを閉めようとしている。
「おもしろいよ」
とシュンは言ってみた。
「トカゲ……」
「面白いよな、シュンくん。
トカゲじゃなくて、ヤモリだけど」
と祖父が言った。
「ヤモリがいることは良いことなんだよ」
(『家守』と言うものな)
とシュンは心の中で思った。
「でも、気持ち悪いでしょ、やっぱり」
と母は言ったが、シュンが興味深げに眺めているのでブラインドを閉めることは諦めたようだ。
窓から離れていった。
(ヤモリは別に気持ち悪くないと思うけどなあ。
イモリ、みたいに腹が赤いと気持ち悪いが……)
家の中に入ってこない限り――窓の外に見る分には――そんなにイヤな存在でもないと思う。
※※※
翌日、シュンはミヨに『ヤモリ』の話をした。
「ヤモリ、ってわかる?」
とシュンが言うとミヨは頷いた――「トカゲ……」
「うん。
いえをまもってくれるから『いえをまもる』、『いえもり』、でヤモリなんだよ」
とシュンが教えてあげると、ミヨは頷き
「イモリはいどをまもってくれるから、いもりなんだよね」
(ほぉ……)
とシュンは思った。
(ヤモリ、はまあよく聞くが。
イモリ――井守――まで知っているとは。
ミヨちゃんは5歳児でずいぶん物知りだなあ)
とシュンは感心した。
(もしかするとミヨちゃんはおじいちゃんおばあちゃん子なのかもしれんな。
だからじじばば的知識がある。
だからじじぃの俺と話が合うのかも知れん)
ミヨの方も思っていた。
(シュンくん、よくおじいちゃんおばあちゃんちの話してる……。
きっとおじいちゃんおばあちゃん子なのね。
だからきっとおばあちゃんの私も話しやすいんだわ)




