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52話 見せたい

 5歳の男の子シュンは自分の腕の内側の、関節に近い部分に、ぽこんと赤く腫れているところを認めた。


(ほぅ……)


 と思う。


(そう言えば公園で砂場で遊んでいたときに、アリンコに噛まれたなあ)


 何匹もアリが腕を這ってくるものだから、払いのけていたらチクッとやられたのである。 


(誰かに見せたい)


 とシュンは思った。


(この見事な腫れ、見せたい)


 シュンは母に見せに行った。

 何気ない調子で、


「おかあさん。おかしたべてもいい?」


 他の用事の『ついで』のように切り出そうと言う思惑である。


「うん、いいわよー。

何食べる?」


 お菓子の入った棚をゴソゴソし始めた母にさりげなく、


「おかあさん。きょう、ぼく、アリにさされた」


「えっ」


 と母はシュンを振り返ってビックリ眼で見る。


「ほら、ここ」


(どうだ、腫れているだろう?

おもしろいだろう)


 シュンはドヤ! と言う風に『腫れ』を見せたが……


「大変!」


 と母はシュンの腕を掴んだ。


(あれ……?)


「えっ。何コレ?

アリ?

ほんとに?」


「うん……。そうだよ。アリだよ」


 シュンは母の剣幕に少しビクつきながら答える。


「ほんと?

ほんとにアリ?」


「うん。

アリがうでにのぼってきて。

チクッとしたから、アリだよ」


「えっ。アリってこんなに腫れるの?」


 その後母はスマホで検索し、シュンの腕に虫刺されの薬を塗った。


大事(おおごと)になったぞ)


 とシュンは思った。

 シュン的には……


『うわぁ。シュンくん、何それ』


『アリにさされて、はれた』


『わ!

ぷくって膨らんでるわね!』


『うん!

ポコンとあかいやまになってる』


『刺されたとき、痛かった?』


『チクッときた』


『大丈夫?』(会話の最後に少しだけ心配の言葉)


『いまはぜんぜん、いたくないから。だいじょうぶ』


 ……と言う展開を予想していたのであったが。


(親とは有り難いものだなあ……)


 とシュンはしみじみ思った。

 ちょっと赤く腫れているだけで、本人も面白がっている『虫刺され』を心配してくれるのだから……

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