45.5話〈閑話〉 身近にいた
5歳の男の子シュンは2つ上の従兄のマオの家で彼と遊んでいたが、ハッと閃いた。
(よく考えれば身近に『理想の男の子』がいたぞ!
マオくんだ!)
『理想の男の子』とは。
シュンが『もしかして自分にもなれるだろうか?』と考え諦めた、見た目良し、性格良し、頭良し、運動神経良しの男の子のことである。
アニメにはよく存在するが現実には滅多にいないのではないか、と思っていたが……
マオはかなり『理想の男の子』に近いとシュンは考えた。
(マオくんは男前だし――身内の贔屓目かも知れんが。
性格はとっても良い――マオくんは『俺と同じく「前世の記憶」がある子ども』かもしれないと疑い、変なことを言ってしまった俺に対しても常に優しくしてくれた。
頭はもちろん良い――『中身は「大人」か?』と思うくらいだった。
運動神経も一緒に公園で遊んだときの様子を見ると、良さそうだ。
少なくとも悪くはないはず)
シュンは後学のためにもマオに尋ねることにした。
「ねえ、マオくん」
「ん? 何?」
「マオくんって、モテるよね?」
と聞いたが、マオはしばらく答えなかった。
シュンがマオをチラッと見ると、マオは照れた顔をしていて、シュンは『ほぉ……』と思った。
(とても大人っぽい――小2には見えない――マオくんも、こんな顔をすることがあるんだな)
子どもとは可愛いものだ……とシュンはホッコリした。
「いや、シュンくん……。
俺、全然モテないよ」
(絶対モテる!)
とシュンは思った。
『モテるけどモテるなんて恥ずかしくて言えないなあ』みたいな反応をたった今していたじゃないか!
「ぜったいモテる!
マオくん、かっこいいもん!」
とシュンが力強く主張すると、マオはさらにニヤけつつも
「そんなことないよ~。
モテないよ、俺……」
(くそう。
モテる男が謙遜など……)
とシュンは思った――小2に嫉妬とは、と思いつつ――が、いや、小2のうちから謙遜ができる男だからこそモテるのか? とも思った。
(さすがマオくん。
俺には敵いそうにないなあ……)
「ねえ、でもねー、シュンくん」
と言う声が割って入った。
マオの母だ。
我が子のピンチに助太刀に来たのか? と思いつつマオ母を見ると、マオ母はニヤニヤしながら言った。
「シュンくんも、モテるんでしょー?」
「えっ」
とマオが満面の笑顔で言った。
自分から矛先が移って安心したのもあったのか。
「シュンくん、モテるんだ!」
「モテない」
とシュンは即答した。
(事実だ)
ミヨ以外の女の子には全く好意を持たれていない……。
「でもおばさん、シュンくんのお母さんから聞いているのよ。
シュンくん、『結婚の約束をした女の子』がいるって」
シュンは照れた。
「えっ!?」
とマオはビックリした声を上げた。
「結婚!?」
「そうよ~。
『おおきくなったら、むかえにいくね』
と言った相手がいるんでしょ~、シュンくん!」
シュンは照れながら言った。
「でも、おとなになってからのことはまだわからないし……」
「今、結婚の約束をしているだけでスゴいわよ~」
「でも、ぼくはマオくんとちがって、ひとりのおんなのこにしか、すかれていないよ」
シュンは『矛先』をマオに移そうと、そんなことを言った。
マオは苦笑しつつ、
「はは……。
俺、モテないってさっきから言っているでしょ、シュンくん」
(おや……?)
とシュンは首を傾げた。
マオが少し沈んだ様子に見えたから。
「シュンくんの方がモテるじゃんかー」
とマオは笑顔で言った。
※※※
シュンとの『モテること』についての話題が終わった後も、遊びつつマオは考えていた。
(『結婚の約束』!?)
マオは思った。
(シュンくんには謙遜したけど。
確かに俺、女子にちょっとモテる……。
『かっこいい』とか言われることあるし)
しかし。
『結婚の約束』!?
そんなのしたことがない!
結婚の約束をするってことは『両思い』と言うことだ。
マオはそんなに女子と仲良くなったことがなかった。
マオは思うのだった……
(たくさんの女の子にモテるより。
好きな女の子と『結婚の約束』をする。
そっちの方がうらやましい……)
『さすがシュンくん』
マオは今日も――シュンに『モテるでしょ?』とうらやましがれ、ちょっと優越感を感じた今日すらも――いつもの結論にたどりつくのだった。




