45話 ピークは小学生
5歳の男の子シュンは子ども向けアニメを面白く見つつ、ハッと閃いた。
(この『理想の男の子』、俺にもなれるかもしれない……!?)
アニメの中の『理想の男の子キャラ(小学生)』。
ハンサムで、性格も良くて、頭も良い優等生。
運動神経も良い。
出来過ぎた男の子……。
そんな男の子に自分もなれるかも知れない。
何せ自分には『前世の記憶』と言う、他の男の子より有利なところがあるのだから。
シュンは自分の容姿のことはとりあえず置いておいて――身内には『良い男』と言われるが自分ではよくわからない――、その他の要素を考え始めた。
……『性格が良い』も置いておこう。自分ではよくわからないし。
と言うわけで、『かっこいい男の子キャラ』の次の特徴。
――『頭が良い』
(『前世の記憶』を生かせば。
俺は小学生のうちなら『頭が良い』で通りそうだぞ)
何故なら小学校レベルの勉強なら今でもわかるから。
前世の記憶――『意味記憶』――があるゆえ。
(もちろん『天才児』には負けるだろうが。
普通の『優等生』になら、なれるはずだ)
『頭が良い』クリア。
次の『かっこいい男の子』の特徴。
――『運動神経が良い』
(これもホントの『運動神経が抜群のヤツ』には負けるだろうが。
たぶん『普通』よりは運動神経が良い奴に俺はなれるはずだ)
何故なら『練習』して『コツ』を掴む系のものならば、既に『コツ』を掴んでいるものも多いから。
例えば鉄棒、器械体操など……。
それに『コツを掴む系』ではなさそうなもの――野球やサッカーなどの球技やマラソンなどの陸上――でも、『初心者』ではないからやはり有利。
(しかし。
小学校高学年にもなると『前世での経験』も通用しないかもな)
シュンの『前世の経験』が小学校高学年くらいの、もう既に『運動経験を積み、運動に慣れた』運動神経の良い人に勝てるほどのポテンシャルを秘めているとは、シュンは考えていなかった。
(前世の記憶を使ったとしても俺が『人より運動神経が優れている』とヒトに思われるのは、おそらく小4くらいまでだな)
とシュンは結論付けた。
テレビの中の理想の男の子を見つつ思う。
(俺もこの子のような存在になろうと思えばなれる――容姿と性格は置いておいて。
しかし、そのタイムリミットは『小学4年生』か……)
そこでシュンは『?』となった。
何故そもそも自分は『かっこいい男の子』になれるかどうか考えていたのだろう?
それは……『一目置かれたい』からだ。
端的に言えば『モテたい』。
(俺は俺の能力――『前世の記憶』――を最大限使うことで、小学生時代に『モテる』経験をすべきだろうか?)
シュンはやはり人生に一度はモテモテの経験をしてみたいと思った。
そして『モテモテの経験』をするには小学校低学年~中学年の時期を逃してはいけないと思った。
しかし……
(いや、やはり。
『小学生のときはスゴかった』と後々思われるのは敵わん。
俺の場合、そう言われるとほぼ決まっているのだから、そんな状況は避けるべきだ)
シュンは『前世の記憶』が及ばないところでも自分は他人から抜きん出ることができるとは思っていなかった。
だから『将来、「前世の記憶」が通用しなくなったとき』のことを今から考えて常日頃あまり目立つ行動は避けているのだ。
それに……こうも思った。
(俺は、今でも――『前世の記憶』をほとんど使わずに皆と接している今でも――モテているではないか?)
ミヨから向けられる好意は、シュンにも何となくわかった。
『好き』とは言葉以外でも何となく伝わるものだ。逆も伝わるけど――『嫌い』の方。
いや、言葉以外の『好意』だけじゃない。
『言葉』でも好意は表されている。
ミヨとは結婚の約束もしているのだ。いや、厳密にはしていないけど。
皆にモテなくても良い……と思った。
ミヨに――1人の女性、しかも自分も好きな女性に――好かれるだけで十分ではないか。
このまま普通の子どもとして普通に、将来落差が大きくならないように生きていこう……。
『子どもの頃はスゴかったのに』と言われないように……。
(あ。でも、ミヨちゃんもそのうち他の男を好きになるかも……)
保育園の今は、平凡なシュンに好意を持ってくれているミヨだが、小学生になると他の、それこそ『理想の男の子』にミヨの好意は向けられるかもしれない。
やはり『普通よりちょっとだけ運動神経が良い』と思われるよう、ちょっとだけ『前世の経験』を使おう、とシュンは思った。
(小学生のうちは運動ができる奴がモテると聞いたからな)
ミヨの気持ちを小学4年生くらいまで引き留めるために、前世の記憶を小出しして使う……
『俺は俗物だな』と思った。




