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43話 方言テスト

 5歳の男の子シュンは祖父母宅で祖父母に頼んだ。


「おじいちゃん、おばあちゃん、なんか、ほうげん、いって」


 祖父母は『?』と言う顔をしたので、シュンの母がフォローした。


「この子、最近方言が趣味なの。

テレビで地方の人が話しているのを真似したりするのよ」


「ぼく、もっとほうげん、しりたいんだ。

だからほうげんのもんだいだして」


 子どもって何に興味を持つかわからないな、と祖父母は思った。


「シュンくん将来は方言博士か」


 と祖父が言う。


「ドラマの方言指導する人になるかも」


 と祖母も言う。


 シュンは「えへへ」と照れてみせて、「いって」とまた頼んだ。


 シュンの内心はこうである。


(方言テスト、をしてみて。

もし俺がこの辺では「あまり聞かない方言」の意味を知っていたら。

もしや前世はその地方の生まれかもしれんからな)


 まあ、『あまり聞かない方言』を知っていたからと言って、その言葉を使う地方に生まれたのではなく、ただ『知識』――『意味記憶』――として記憶していただけかもしれないが。


「じゃあ言うわね」


「『いみ』はぼくがかんがえるから、こたえをすぐいっちゃダメだよ」


 祖母は頷くと、


「じゃあ。『そだね~』。

意味わかる?」


(簡単だ)


 とシュンは思った。

 2018年の流行語ではないか。

 シュンは元気に


「『そうだね』!」

 

 と答えた。


「シュンくん、すご~い」


 拍手する祖父母と母。


(すごくないと思う)


 と思いつつ、


「もっともんだい!」


 とせがむ。


「じゃあ。

『なんくるないさー』は?」


 と祖父が言った。

 少し良い問題になったとシュンは思った。


 ビートルズの歌のタイトル『Let it be』を思い浮かべつつ、


「『なんとかなる』みたいなかんじのいみ」


 と言うと、今度は皆、本当に感心したような拍手をした。


「スゴ~イ!

ほんとに博士!」


「いつ知ったのかしら?」


 と首をひねる母。


「つぎのもんだい!」


「『おおきに』は?」


「『ありがとう』!」


「すご~い!」


 ぱちぱちぱち……。


「つぎのもんだい!」


「『めんこい』」


「『かわいい』!」


「『しばく』」


「『たたく』!」


 シュンは方言テストをしている最中、気付く。


(皆、『有名どころ』の方言しか言わないぞ)


 これでは前世で使っていた言葉とか関係なく『普通に知っている』。

 その後も……


「『おいどん』」


「『わたし』!」


「『じぇじぇじぇ』」


「『ビックリ』!」


「『おかん』」


「『おかあさん』!」


「『あかん』」


「『ダメ』!」


 などなど『皆が普通に意味がわかる』方言が続いた……。

 楽しいひとときではあるものの、シュンの目的にはそぐわない、ある意味『茶番』であった。



※※※


 しかしこのやり取りのおかげもあってか、その後祖父母が方言の本を買ってくれた。

 が、結局、その本を読んでも『前世の言葉』としてビビッとくる方言は特になかった。


(まあ、別に……。

前世の具体的な記憶を必ず思い出さなければならないと思っているわけではないのだ)


 思い出さないと言うことは、思い出さなくても良いと言うことなのかもしれない。

 それに、今の生活が幸せな時点でありがたいことなのだ。


 なるようになる……と思った。

 

(『前世の自分探し』。

これを生涯の趣味にしても良いかも知れんな)


 5歳の時点で気長な趣味を持ったシュンだった。

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