40話 新聞
5歳の男の子シュンは祖父母宅のリビングで一人新聞を読んでいた。
そこに祖父がやって来て「おっ」と言う。
「シュンくん新聞を読むのか。
感心だなあ」
シュンは顔を上げ、
「え」
と、新聞右上の端にある『漫画』を指差した。
「えを、みてる」
祖父は新聞を覗き込むと、
「そうか、シュンくんは漫画を読むのか」
とニコニコした。
シュンは「うん!」とニンマリしてみせると新聞に視線を戻す。
(漫画のある面を広げておけば、
『えをみてる』
と言う言い訳ができるのだ)
と言うシュンの腹黒い思惑である。
その後母と祖母が部屋に入ってくると、
「あら~。
シュンくん、新聞を読むの?
えら~い」
と祖母が言った。
シュンは再び言う。
「えをみてる」
「そっか~。
漫画を見てるの?
面白い?」
「うん!」
「ウチ新聞取ってないから。
珍しいのかもね~」
と母が言った。
「だからシュンは『食卓で新聞を広げるお父さん』を知らないのよね。
『スマホでニュースサイトを見るお父さん』だわ」
「あはは」
祖母は笑うと、
「じゃあ、今、シュンくんはおじいちゃんが新聞を読むときの真似をしているのね、きっと」
シュンを指差し、
「床に広げて、新聞を読む感じ……
何だかおじいちゃんっぽいもの」
シュンは祖母の言葉にハッと顔を上げた。
祖父が少し嬉しそうに「そうかなあ」と言うので、シュンも「えへ……」と笑ったが、内心ドキドキしていた。
(おじいちゃんっぽい、だと?
いや、おばあちゃんは俺が『おじいちゃんの真似をしている』と思ったからそう言ったのだろうが……)
しかし。
もしかすると祖母はシュンに『ジジくささ』を感じたのかもしれない。
やはり横着して人前で5歳児がしなさそうなこと――この場合は『新聞を読む』こと――をするべきではないな、とシュンは反省するのだった。




