39話 自転車
5歳の男の子シュンは両親と散歩をしていた。
3人の横を自転車が通り過ぎていく。
小学校低学年くらいの子どもだった。
ヘルメットをかぶった小さな姿で、補助輪なしの自転車を運転している。
見送った後、
「シュンもそろそろ補助輪を外して乗る練習しないとな」
と父が言った。
「そうね~。
もう乗れて良い頃なのかな?」
「あとでググってみるか。
『自転車 補助輪なし 何歳から』」
両親の相談を横で聞きつつ、
(もう乗れるがな)
とシュンは思った。
(たぶん自転車はコツさえ掴めば、ずっと乗れるから。
俺は前世でコツを掴んでいるはずだから、今でも補助輪無しの自転車にも普通に乗れるだろう)
つまりは補助輪を取った最初のうちは『乗れないフリ』をしなければならないのだ。
そっちの方――『上手く「乗れないフリ」ができるか』――をシュンはむしろ心配していた。
(補助輪無しの自転車に人より早い時間で乗れるようになることで、
『シュンは運動神経がすごく良い!』
などと勘違いされて期待されては敵わん。
適度に『乗れないフリ』をせねばな。
上手くできるだろうか?
上手く転べると良いけど……痛いのはイヤだな)
※※※
家に帰ると、シュンはリビングで一人遊びつつ考えた。
(自転車以外にも、俺は他の子どもに比べて有利なことがあるかもだな)
シュンは『コツさえ掴めば、ずっとできるだろうこと』を考えてみた。
その『コツ』を前世で掴んでいれば、現世では『コツを掴むまでの過程』がなくてもそれができるはずだ! と思ったのだ。
自分が前世で習得したゆえ今も使える『コツ』をこの機会に知っておこうと思った。
(コツさえ掴めばできることで、俺がそのコツを既に掴んでいそうなこと……)
『逆上がり』がいちばんに頭に浮かんだ。
できそうだ。
しかし、試そうにも『鉄棒』がないので、『できそう』と頭の片隅に置くだけに止めた。
(他には?
何かないだろうか?)
次に思い浮かんだのは『逆立ち』。
できそうだ。
シュンは目をキョロキョロ動かした。
今、この部屋に両親はいなかった。
壁に向かうと……
とん! と足を蹴り……
(できたぞ)
『逆立ち』クリア。
シュンは逆立ちしつつ、考えた。
他に何か『一度コツさえ掴めば、ずっとできそうなこと』はないか……。
『側転』!
シュンは逆立ちをやめると、側転をしてみた。
くるっ。
(できたぞ)
他にないだろうか?
前世で『コツ』を掴んでいそうなこと、他にないか……
シュンは腕組みしつつ、考えたが……
(思い付かん)
『俺って大したことないな』とシュンは思った。
(う~ん……。
そうだ! 『スキップ』!)
いや、スキップは保育園児も普通にできる……とシュンは保育園の皆の様子を思い返した。




