38話 写真
5歳の男の子シュンは保育園から『写真』を持って帰ってきた。
「このあいだのえんそくのときのしゃしん」
母は楽しそうに何枚かある写真を眺めた後、夫に手渡した。
父も興味深げに写真を見る。
母も夫が見るのに横から覗き込みつつ、
「これ、よく撮れているよね」
「そうだな」
そこで父はフッと笑いを漏らしたので、妻は首を傾げる。
「どうしたの?」
「いや……シュンってさ」
可笑しそうに、
「写真撮られるときの表情、硬いよなー」
写真を指差す。
「ほら。
皆、顔を崩した満面の笑顔しているのに。
シュンだけ『ニッ』みたいな……」
母もフフッと笑う。
「ほんとだ……。
『にっこ~』の隣で、『ニッ』」
「ははは」
(ひどいことを言うなあ。
まあ自覚はあるが……)
シュンは思った。
(どうも子どもらしい『満面の笑み』をカメラの前ではできん。
しかしこうも言われたら、今度からはもっと努力してみるか……)
「あ。でもこの子も。
ちょっと表情硬いなあ」
と父が言うのに母が覗き込む。
「ああ。ミヨちゃんね」
「あ、ミヨちゃんか……。
会ったことあるな」
父は横目でシュンを見る。
「シュンのガールフレンド」
シュンは照れた。
母が写真を見ながら楽しそうに言う。
「ミヨちゃんの場合は『うふ』と言う感じね」
「いやミヨちゃん、可愛いね~。
ハニカミ笑顔、と言う感じで」
父はシュンを見つつニヤニヤ言った。
「しゃしんとられるの、きんちょうするから」
とシュンがミヨのためにも弁解すると、母が可笑しそうに言う。
「シュンくんは動画を撮るときも緊張するよね」
父も母に続いて言う。
「マオくんとか全然撮られても自然、と言うか動じないのに。
シュンはカメラを向けられるとすぐ動きが硬くなるよな」
「今の子って、動画撮られることに全然抵抗感ないみたいなんだよね。
カメラを向けると実況とかも始めちゃったり。
そう言うY○uTube見ているから」
「カメラ慣れしているよな。
『一部』を除いて」
父はからかうように横目でシュンを見て、シュンは『むう~』と言う顔をした。
(しかたなかろう……。
俺は生まれながらに『動画撮影が当たり前』の世代ではないのだから……)
自分は他の子どもより確かに有利な点はあるだろう。
が、不利な面もいっぱいあるのだな、と改めて思ったシュンだった。
(しかも今『有利なところ』もそのうち追いつかれるんだろうなあ……)




