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35話 誕生月

 5歳の男の子シュンは、保育園の友達3人とファミレスに来ていた。

 もちろん母親も同伴である。


 シュン母子以外はアキト母子、ミヨ母子、レイナ母子である。 

 8人がけのテーブルで間に子どもを2人ずつ入れた形――4隅に母親が座る形――で話をしている。


 シュンの右隣にはシュンの母。

 左隣にはアキト。

 前にはミヨが座っていた。


 母親たちは子ども達にときどき気を配りつつ話をする。

 子どももそれぞれデザート等を食べ、ちょっかいを出しつつ、時間を過ごしていたが……。


 シュンはふと母たちの会話に耳をそばだてた。


 レイナ母が言う。


「シュンくんて誕生日、いつ?」


「8月生まれよ」


 とシュンの母が答えると、アキト母が言う。


「あ。じゃあ、しし座?」


「そうよ」


「あ~。なんか、そんな感じする~」


 とレイナ母が可笑しそうに言うと、ミヨ母もアキト母も笑いながら頷いた。


「ぽいよね~」


(なぬ……?)


 と思ったのはシュンだった。


(『しし座』。

テレビでも星占いをやっているが……。

そして俺は確かに『しし座』だが――誕生日から見るに。

しかし『しし座っぽい』とは何だ)


「あは……。そうかな」


 とシュンの母が照れたような顔をするのに、


「うん。しし座って感じする」


「何か『堂々』としてると言うか」


「王者? みたいな?」


 母親たちは口々に勝手なことを言う。


(『堂々』?

『王者』? ――百獣の王『獅子(しし)』だから?)


 シュンは首を傾げた。


 その後母たちはアキトの星座、レイナの星座でもまた、


「そんな感じする~」


 と言い合った。


(誕生した日にちで何がわかるのだ?

性格など決まるとは思えん。

まあ、『気候』的な要因はあるかも知れないが――『夏生まれ』と『冬生まれ』では性格が少し違うなどと言うならまだわかるが。

『星座占い』とは、世界共通の考え方なのだろう?

つまり『気候』での占いではないはずだ。

よくわからないなあ……)


 と思いつつ、シュンは耳を傾けていたが、


「ミヨちゃんは?

何月生まれ?」


 ミヨの番となり、ますます耳をそばだてた。


「ミヨは3月生まれ。

魚座よ」


 とのミヨ母の答えに


「ぽいね~」


 と皆、口をそろえた。

 シュンがチラリとミヨを見ると、ミヨも母たちの顔をジッと見ている。

 会話を聞いているのだ。


(ミヨちゃんは3月生まれ。

『魚座』とな)


 とシュンは脳にメモした。


「でも、ミヨちゃん3月生まれかー。

ちょっとビックリ」


 アキトの母が言い出すと、皆、きょとんとした。


「えっ。

でも『魚座』のイメージピッタリじゃない?」


「『優しい』と言うか……」


(『魚座は優しい』。

あってる)


 とシュンは思いつつ、母たちの話の展開に注目した。


「うん。魚座なのは、ピッタリだなあと思ったけど。

ミヨちゃんシッカリしているでしょ?

だから『3月生まれ』と言うことにビックリしちゃった」


 とアキト母が言うとシュンとレイナの母も「あ~」と納得した。


「確かに、ミヨちゃん、身体は小さいから『3月生まれ』と言われてもわかるんだけど。

シッカリしているよね~」


 レイナ母はミヨをにこやかに見る。


「食べ方とか、普段の身支度とか、しゃべり方も、シッカリしてるよね!」


 シュンの母が続く。


「そうよね。

この年では『3月』と言うか『早生まれ』はどうしても他の子より色々まだ幼いと言うか。

それが当たり前なんだけど――5歳の時点で『数ヶ月生まれが違う』って大きいものね。

でも、ミヨちゃんは他の子と比較しても、全然『お姉さん』よね~」


「ほんとミヨちゃん、すごい!」


 と言う母たちの誉め言葉にシュンも喜びつつ思った。


(本当にお母さんたちの言うとおりだ。

ミヨちゃんは5歳児ながらしっかりした女性(ひと)なのだ……)


 そして、どこか誇らしげにシュンはミヨを見たが……。

 ミヨは困ったような、シュンとした顔でテーブルを見つめていた。


(あれ……?)


 まるで母たちの話に『申し訳なさ』を感じているようだ。

 シュンは不思議に思った後、閃いた。


(ミヨちゃんはきっと『謙虚』なのだ。

だからお母さんたちの『褒め言葉』に居心地の悪さを感じるに違いない。

『褒められると困るタイプ』なのだ!)


 と、ここでシュンは母たちの自分への『評価』を思い出した。


(俺は『堂々』、『王者』か)


 シュンはその言葉を『良いこと』とは受け取れなかった。


(俺は昔のジジイだからな。

子どもの姿をしていても『頑固ジジイ』な面がどうしても表面に出てしまうのだろう。

しかし子どもゆえに『頑固ジジイ』とは思われず、好意的に『堂々』、『王者』などと受け止めてもらえるのかもしれんな。今のうちは)


 しかし子どもの姿でいられるのもあと何年かだとシュンは今から考えた。

 

(俺もミヨちゃんのようにもっと『謙虚』にならねばいかんな)

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