33.5話〈閑話〉『貧乏性』
お友達のリンネ宅で『シフォンケーキ作り』中の5歳の女の子ミヨは、リンネの母の手を借りながら一生懸命ボールに入った『シフォンケーキのもと』をシフォンケーキ型に流し込んでいた。
スパチュラを持つ手を何度も往復しつつ。
「むずかしい……」
と言うミヨのボールの中身を見て、リンネが明るく言う。
「もういいよ、ミヨちゃん。
十分きれいに、入れたと思うよ!」
リンネの言葉にきょとんとして、ミヨはボールを見る。
「でもまだ……ボールにいっぱい、きじがついてるよ」
ボールには、ミヨから見たら、『まだまだすくえそう』な黄色の生地が所々に残っているようなのだが……。
「ミヨちゃん、こう言うのはね、自然と『生地の悪いところ』が底に残るようになっているんだよ。
だから無理してすくって、入れなくて良いんだよ」
とリンネが教えを授けるように言うと、ミヨは目を丸くして、
「そうなんだ!
……わるいぶぶんがたまるの?」
「うん。そうなんだよ。
……ってケーキ作りの先生が言ってたの」
とリンネは『先生から聞いた話』であることを照れくさそうに打ち明けた。
「へえ~」
ミヨは感心して、リンネの言うとおり生地を『根こそぎ』入れようとしていた手を止めた。
※※※
リンネ母子はシフォンケーキが焼けるまで後片付けをしている間、ミヨには手伝いを求めず待っているよう言った。
ミヨはキッチンとつながっているリビングでリンネ母子の様子を少し申し訳なさそうに見つつ、ケーキ作りを思い返していた。
ボールに残った生地は、そのままキッチンの流し台へと行ったが……
(どうしても『もったいない』と思っちゃうな。
あの『残った部分』も普通に美味しいと思うの)
ミヨは『リンネの言葉』――『底に残ったものは、その生地の「悪い部分」だから、入れなくても良い部分』――を疑ったわけではなかった。きっとリンネの言うとおりなのだろうと、感心した。
しかし、それでも『残った部分』も『普通に美味しい』には違いない、と思ってしまったのだ。
『最善を尽くす』ならば除くべき部分なのかもしれないけど……。
(でも。
『ケーキ作り』に限らず、こう言うものは『無駄』と言うか、『もったいない』が付き物よね)
『必要もったいない』と言うか。
(きっと、こう言う家庭で出る『もったいない』以上の『もったいない』が、既製品を買うときは発生しているんだろうなあ……)
ミヨはそっとため息を吐きつつ、1人結論付けた。
(私って、きっとすごく『貧乏性』なのね。
今の時代にそぐわない……)




