30話 壁
5歳の男の子シュンは祖父母宅で遊んでいたが……
「あっ……!」
おもちゃの先で壁を擦ってしまった。
シュンの『しまった!』と言う声に祖母がやって来る。
シュンは壁の傷を指差しつつ、
「ごめんなさい……」
謝る。
「あら~。傷……」
祖母はさして気にしたようでもない調子で『傷』を確認した後、
「いいのよ~、シュンくん。
傷が付くのは仕方ないよ」
シュンを慰めてその場を離れた。
シュンは反省したように自分の付けた傷痕を見ていたが……
(ん!?)
じぃーっと傷痕に目を凝らすと
(この壁、『木』じゃない!)
傷は明らかに『木の壁』に付いた傷痕ではなかった。
もっと柔らかそうなものに付いた感じの傷……。
(何と!
コレ、『木』じゃなくて、『木』の模様の『壁紙』なのか!)
シュンはビックリした。
その後別の部屋の壁の所へ行き、壁をとんとんと叩いてみる。
(こっちはどうやら本物の『木』のようだ)
本物の『木』の壁に混じって、『木目調の壁紙』を貼った壁がある。
ゆえに『木目調の壁紙』の壁も『普通に「木」だろう』と錯覚してしまうのではないか? とシュンは考えた。
(木を隠すなら森の中、か……)
シュンは感慨深げに祖父母宅の壁を見て廻った。
(しかし。
全然、実は『木じゃない』と気付かない。
たぶん、『傷』さえなければ、ずっと『木の壁』と勘違いしたままだったのだろう……)
シュンは思った。
(現在の技術はスゴいなあ……)




