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24話 ムカデ (※虫ご注意)(読み飛ばし可)

「キャー!」


 5歳の男の子シュンは祖父母宅に遊びに来ていたが。

 家の中に響き渡る叫び声にビクッと身体を震わせた。

 

 あの声は……


(お母さん!?)


「キャー!

いやぁああっ!

お母さん、お母さんっ!」


 母の、その母――祖母――を呼ぶ声。


(何事だっ!)


 シュンは急いで立ち上がった。


(今、おじいちゃんは外出中だ。

この家にいる男は俺一人。

俺が何とかせねばならん)


 シュンは母の声のする方へ駆けて行った。

 母の声は洗面所の方からした……。


「おかあさん!」


 シュンの声に母はハッとシュンを見る。


「どうしたの!?」


「シュンくんは来ちゃダメっ!」


 母の強い口調に、シュンはたじろぐ。


(い、一体、何が……!?)


 その後シュンの後ろに、娘の声を聞き駆けつけた自分の母を認めると、シュンの母は


「お母さん、お母さん!」


 とある一点を指差す。


「ムカデ!」

  

 シュンと祖母は母の指の先に目をやり、


「うわあっ!」


「キャー!」


 それぞれ叫んだ。


 祖母は慌ててその場を離れ、しばらく後、手にスプレー缶を持って現れた。

 殺虫スプレー――凍殺○ェット――だ。


 祖母はムカデにノズルを向けた。


 シュウウウウウッ!

 シュウウウウウッ!

 シュウウウウウッ!


 ムカデは凍った。


 シュンの母はムカデが凍ったことを確認すると、しばらくその場から離れビニール袋を持って戻ってきた。

 女たちはティッシュで包んだ手で凍ったムカデを掴み、袋に入れて口を縛る。


『凍っただけでまだ生きているかも。

あるいは溶けたら生き返るかも』


 と言う万が一に備えて、『生き返ってもまたその辺をうろうろしないように』ビニール袋に入れてゴミ箱へ……。


「田舎ってやーねー」


 と祖母が言った。


 祖父母宅はシュンの住む家と同市内であるが、山の近くにあるのだ。

 故にシュンの家よりも色んな虫や動物がいたりする。



※※※

  

 その夜、シュンとシュンの母は祖父母宅に泊まったのだが、シュンはトイレで小さなムカデを見つけた。

 シュンの小指よりも小さいくらいだ。


 この子どものムカデもこの家の者が見つけたら、きっとあの凍殺○ェットで殺されるに違いない。


 そう思ったシュンは噛まれないようにティッシュでムカデを掴むと、そっと玄関から外へ出て隣にある畑まで行き、


(もう家に入って来るなよ)


 ムカデを逃がしてやった。

 別に良いことをしているつもりはない。

 ただ殺すのが――殺されるのが――忍びないと思っただけだ。

 あの凍殺○ェット……。


(しかし。

俺も大きいムカデにはこんな情けはかけられん。

小さなムカデで毒も強くなく、噛まれる心配もさほどないと思うから、捕まえて逃がすこともできるのだ)


 腕を組み考える。


(5歳の子どもが毒性の強い大きなムカデに噛まれたら、大事になる可能性もある――病院へ行く必要も出てくるかもな。

それに何度も噛まれるとアナフィラキシーショックを引き起こすやも知れん)


 ムカデは害虫だ。

 シュンにはわかっていた。

 祖母や母が怖がりながらもムカデを退治したのは、自分たちもそうだが特にシュンが――子どもが――噛まれることがあってはならないと思ってのことだと。

 

 あの小さな、まだ毒の弱いだろうムカデもシュン以外に見つかったら退治される運命にあったのは、いずれ大きくなって毒の強いムカデになるとわかっているからである。


 しかしシュンは後のことは特に考えずにムカデを逃がしてやった。

 特に良いことをしているつもりはない。


(しかし。

ムカデはどうも見た目が好かん)


 とシュンはやはり思った。


(似た生き物に『ゲジゲジ』がいるが。

ゲジゲジは益虫と言う意識があるからか、さほど嫌ではないのだが……)

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