20.5話〈閑話〉 ババ抜き
5歳の女の子ミヨは自宅のリビングルームで両親とトランプ遊びをすることにした。
「ミヨちゃん、何したい?」
と聞く母にミヨは
「ババ抜き!」
と即答する。
両親は笑った。
「ミヨちゃん、ババ抜き好きだよね」
と言う父。
「うん」
照れつつミヨは思った。
(ババ抜きは面白いし。
それに『運』要素が強いから『5歳児らしさ』みたいなものを目指さなくても大丈夫だから楽なの)
父がカードを配り終わると母が言う。
「ミヨちゃん、同じ数字のカードを出すの、わかるかな?」
「わかるよ!」
ミヨはたどたどしい手つきで、数字が揃ったカードをテーブルの上に置いていく。
手が小さいから、どうしてもたどたどしくなるのだ。
それで良かった、とミヨは思う……。ナチュラルな『5歳児らしさ』。
「終わった?」
「うん」
「じゃあ、やろうか」
何回かカードを交換すると、母が上がった。
「やったー、いちばん!
あ、ババを持っているのはお父さんね!」
母はミヨの持つカードを後ろから覗きこみつつ言う。
ミヨは父の持つ3枚のカードを見つめた。
ミヨは2枚。
ババ以外を引けば勝てる。
父は真ん中の1枚だけ他の2枚より目立つ感じにカードを持って、ミヨに見せる。
「さあ、どれだ?」
ニヤニヤする父。
ミヨは考える。
(真ん中のカードがいかにも取りやすくなっているわ。
これがお母さんなら、真ん中のカードはババじゃないの。
お母さんなら私にババを取らせないように、ババは取りにくい位置に置くの。
でもお父さんは。
お父さんは結構真剣勝負なところがあるから。
取りやすい位置にババを置く可能性があるわ。
でも、逆かもしれない。
私、今までに何回もお父さんが目立つ位置に置いたババを取ったことがあるから、今日は『わざと目立たないところ』にババを置いている可能性もあるわ)
ミヨは決心して、真ん中のカードを取った。
「あ~!」
とミヨが叫ぶと、
「ふふ」
と母が笑い、
「やったー!」
と父が手を広げ小さく万歳をする。
「う~」
とうなりながら、ミヨは拙い手つきで3枚のカードをシャッフルすると父の前に広げた。
「ふふふ……」
父がミヨの持つカードの一枚を引く。
こんな風にミヨ宅の平和な夜は過ぎて行った……。




