鏡よ鏡、44
「母がね、働いてなくて専業主婦とかだったら、父も好きな人が出来ても浮気で終わらせたんじゃないか、とか思うのね」
ひとみはビールのおかわりをして肉団子をまるごと口にいれた。
「ひとみさんのお母さんに生活力があったから、浮気じゃなくて本気になった、ってことですか?」
杉原はレモンサワーを頼んだ
「うーん…なんかそんな感じする。実際、母が働いてなかったら悲惨なことになってるだろうし。まあ妻が働いてなくても失踪する男もいるんだろうけど」
「わたしもひとみさんも父親がいなくて、子どもの頃の欠落を埋めるために生きてるところがあるのかもしれませんね」
「わたしは欠落を埋めてないよ(笑)ほったらかし」 「(笑)そんなふうに見えませんけど」