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金継ぎ  作者: 有田シア
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絶対絶命  ー香奈恵ー

弁二のの膝に座っている里奈が咳き込んでいる。

いつもとは明らかに違う咳にすぐ反応して佳奈恵は「里奈?」と言いながら様子を伺った。

だんだん里奈の咳にヒューヒューという呼吸音が混ざり呼吸が不安定になってくる。

「里奈!?」佳奈恵の叫び声にみんなが一斉に固まる。

蒼白の里奈は弁二の腕に倒れこんだ。

弁二は何が起こっているのかわからず、「里奈!」「里奈!!」とぐったりした里奈の体を支えながら叫び続けていた。

恐怖に震えたその声がことの重大さを振りまくようにみんなに伝えていた。

「救急車!」と金二が叫んだ時にはもうすでに佳奈恵は震える手で携帯を持ちながら救急医を呼んでいた。

「急に咳をし出して、呼吸困難みたくなって。。あの、急にこうなったんです。別に具合が悪かったわけでもないし。」

香奈恵は自分に落ち着けと言い聞かせるが、上手くこの状況を説明できなかかった。

「呼吸はしていますか?」

「こ、呼吸ですか。。。はい。」

電話先の女の人の質問に答えながら、言われる通りに床にタオルを敷き、里奈を寝かせた。


弁二は動かなくなってしまった里奈をただ見つめていた。


「あっ、そうだ今店の前の道路工事してるんで、もしかしたら。。。」

香奈恵が電話の相手にそう言いかけたところで弁二が、佳奈恵の携帯を奪い取った。

「早くしてくれ!何やってんだ!」

弁二は携帯に向かって怒鳴りつけた。

「今、救急車はそちらに向かっていますので、そのままお待ちくださいね。」

電話から聞こえる女の人の声は弁二の勢いに動じることなく冷静に言った。


佳奈恵は救急車の中で救急隊員のいつからどんな症状でなどの質問に答えていた。

さっきまで元気に走り回っていた里奈は機械的なこの救急車の中でチューブやら線やらに繋れている。

急に現実から引き離され、雲の上を歩いているようで佳奈恵の意識は地に着いていなかった。



病院に着いてからだいぶ経ったのに後から車で来ると言った弁二はまだ来ていない。

香奈恵は冷たい椅子に座ってなぜこうなったのかを考えるが、わからなかった。

看護婦や医者が緊急処置室から出たり入ったりする度に立ち上がり、何か変化がないかと様子を伺う。

「状況は後で説明しますから。」と言われたので香里奈は話しかけたいのを我慢してまた椅子に座る。

白い白衣にマスクで無機的な彼らは佳奈恵になんの手がかりも与えずさっさと歩いていくだけだった。


佳奈恵の携帯が着信を知らせている。

「里奈どうだ?」

弁二が低い声で言った。

「まだわからない。何してるの?」

「来る途中で事故にあった。」

佳奈恵は我を忘れて猛スピードで運転する弁二を想像した。



(事故の被害者)


あれは明らかに向こうが悪かったの。だから、達也は車から出てきた男の人に、

「ちょっと、あんたどこ見て運転してんの?」

って、責めるように言ったのね。達也のお気に入りの車がへっこんじゃったもんだから。そしたら「すみません。」

って、その男はそれだけ言った後、おっおっって低い声で泣きはじめたの!

あまりにも見っともない泣き方で、なんか可哀想になったから私達はその人の話を聞いてあげてさ。で、その後その人を病院まで連れてってあげたってわけ。

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