こんな始まり方!?
草木がそよ風に揺られる中、照月綾もそよ風に吹かれるように立っていた。
「新君がここに来た理由は、私と一緒に冒険するため」
それから何もわからない中、照月綾との冒険が始まった。
冒険が始まって一日目…
この日のうちに、わかったことがある。
まず、この世界は今まで僕がいた世界とは時間の進み方が違っていて、この世界で一週間経過すると今まで僕がいた世界では一年も経過していることになる。つまり、これが本当だとすると照月綾は一年も異世界にいることになる。
また、この世界に僕が来られた理由…いや!来てしまった理由は、自身がこの世界の本当の人間であること、照月綾の書いた呪文を見ることの二つが原因でこの世界に来てしまったということ。
そして、何故だかわからないが僕は照月綾とこの世界で冒険をしないといけないということだった。
二日目。
今日の収穫は、何もない。
昨日まではこの世界について色々と教えてくれていたのだが今日の照月綾は、どれだけ喋りかけても「行くよ」しか言ってくれなくなってしまった。
三日目。
この日にとても大事なことが、わかってしまった。
完全に照月綾に嫌われているということだ!
昨日までは、「行くよ」だけだがまだ喋っていてくれたが、もう何も喋ってくれない。僕を置いて先に行ってしまうことすらあるのだ。
これは完全に嫌われている。そもそも照月綾とは仲がいいとは言えないのに二人で冒険なんて…
照月綾にあった日に、ドキドキしたのがまるで馬鹿みたいだ。もう、恥ずかしさすらも感じてしまうくらいに馬鹿馬鹿しい…
それにしても、三日間ずっと飲まず食わずだ。寝てもいない…、ずっと歩きっぱなしの三日間だ。だが!そんなことは関係なく照月綾はずっと先に先に進み続ける。
「おい、照月さん!」
やはり返事はない…
四日目たった。
この日は、いつもと違った。
村を見つけたのだ。照月綾はここを求めて進んでいたということがわかった。
村につくと小さは家に照月綾が入って行くのでそれについて行くとそこには、豪華とは言えないが五、六人前の料理が用意されていた。
「こ、これって食べて…いいの?」
もう食べることしか考えずに照月綾に聞くが照月綾はそこにはいない。照月綾はもうすでに食べ始めていた。
僕も照月綾が食べているのを見ると我慢ができなくなり、貪るように食べ始めた。
「ウッメェェェェーーーーー!!こんなにウメェ物食ったことがねぇよ!」
もう、四日ぶりの食事だった。食べることしか考えられない。
「フフフッ、美味しかった?」
食事が終わると照月綾がこちらを見て笑っていた。
いつもと違い不気味な笑い方でわなく、とても可愛いく笑っている。
「まぁ…」
こんな笑顔を見るのは久しぶりな気がする。ずっと無視されているようでこんな笑顔で笑っている照月綾に僕は惚れてしまった。
「本当に、美味しかったのぉーー?」
いつもと違う。
照月綾がこんなに可愛いなんて…
「ほ、本当に、ウマかったよぉー!ありがとー!」
「どういたしまして」
聞き覚えがある声で返事が返ってきた。
「え?だれ…?」
すると、家の奥から八木先生が出てきた。
「そーかそーか〜、それほどウマかったのか!久しぶりだね!佐藤君!」
「や、八木先生!?」
とても驚いた。
元居た世界で別れたはずの八木先生がいるなんて、確か図書室の前であったのが最後でそこで、別れたはずだったのだ。
「なんで、八木先生がここにいるんですか?」
「それはこっちの世界の人間だからだよ!」
八木先生は得意げな顔で答えた。
「そんなに自慢するようなことじゃないでしょ!サン!」
照月綾は八木先生のことを急にサンと呼び始めたのだ。
「サン!?なにそれ?」
僕は不思議そうに照月綾に八木先生にサンと言ったことについて聞いてみた。
「それはこっちの世界での名前だよ!ちなみに私はこっちの世界ではリノ。これからは、リノさんッとかリノちゃんッとか好きに呼んでねっ!」
「ぼ、僕にはそんな名前ないのですか?」
「まぁ〜ないことはないがぁーー。あまり期待してもらっちゃ困るなぁ…」
八木先生は目線をそらして少し苦手そうな感じで答えてくれた。
「この世界での君の名前は…」
「僕のぉ…名前は…」
この世界での名前を言う瞬間とても期待しているが、照月綾は少し苦笑いをしていた。
「君の名前はアラタだァ!そのままだ!」
「…ハァ?そのまんまじゃねぇーかよ…」
こうして佐藤新は、アラタとしての冒険が始まる。