こんな本に導かれて!?
雪が降ったあの日、クラスメイトでもある照月綾は行方不明になった。
照月綾は小学校から高校までずっと一緒だが、あまり話したことはない。クラスの中でもあまり目立つような人間ではなく、友達が誰もいないと言ってもいいほど、ずっと一人で居て、どちらかといえばとても大人しい存在だった。
照月綾が行方不明になった日、僕は放課後に補修を受けていた。
時刻は午後9時頃だった。補修が終わり帰ろうとしていた時、図書室の前を通ると彼女は一人で読書をして居るように見えた。声をかけようとしたが、とても疲れていたので声もかけずに帰った。
照月綾を見るのは最後だった。
あの日から一週間たった。
僕は相変わらず補修を受けている。
補修が終わったのが午後九時だった。
もしかしたら、照月綾が居るんじゃないかと思いながらこっそり図書室に入った。
「誰だ!」
図書室の管理者である八木先生が居た。
「こんな時間に勝手に入って、すみません。」
怒られるかと思うと、途端に先生の顔つきが変わった。
「君はもしかして、二年b組の佐藤…佐藤新君かい?」
「あ、はい。そうですけど?」
八木先生は少し考えるようなそぶりを見せた。
「今日はもう遅い、早く帰りなさい。」
「はい、すみませんでした。」
図書室を出ようとした時だった。
あの日、彼女があんな時間に何を読んでいたのか、なぜ行方不明になったのかを、ずっと疑問にも思っていたことを聞いてみた。
「先生は一週間前、照月綾が行方不明になった日もここにいたんですか?」
「あぁ、いたよ。一週間前、照月君が図書室にいたことも知っている」
この時もしかしたら、照月綾の行方を知っているのではないかと思い始めた。
「先生は、照月綾の行方を知っているのではないのですか?」
「照月君のことを聞きたいのならまた、明日来なさい。今日はもう遅い。」
時刻は午後10時だった。
「はい、わかりました。」
八木先生は絶対に照月綾の行方を知っている。さっきまで疑問に思ったことが確信に変わった。
次の日ー
この日も補修があった。
終わったのはいつもと同じように午後9時だった。
最近ずっと補修が続いてとても疲れていた。
だが、そんなことは関係ない今日は、照月綾がなぜ行方不明になったのかがわかると思いながら補修が終わるとすぐ、図書室に向かった。
しかし、図書室は真っ暗だった。
「八木先生ーー。」
返事がない。もしかしたら今日はもう帰ったと思いかけた時、暗闇の中から幽霊のようにスッと出てきた。
とても驚いたが、八木先生は急いでるようだった。
「すまない、私はもう、帰らなければならない。」
「えぇ?照月綾のことは教えてくれないんですか?」
そのことを言うと先生はカバンの中から一冊の本を取り出した。
「一週間前、照月君が読んでいた本だ。」
どんな本なのかと思い手に取ってみると、国語辞典だったのだ。
「え?本当にこれを読んでいたのですか?」
「本当だ、それにその本は照月君が二年b組の佐藤新に渡して欲しいと言っていた。」
「僕に?なんで国語辞典なんですか?」
「それは私にはわからない」
「すまないが、私には時間がないんだ。その本は持って帰って読んでもらえないか?」
「は、はい。」
八木先生は急いで帰ってしまった。
僕は帰りながらなぜ、照月綾は国語辞典を僕に渡したかったのかを考えながら帰った。
帰宅途中、もしかしたらずっと補修をしている僕に対して馬鹿にしているのではないのかとも思ったが、照月綾はそんなことをするようなタイプでもなかった。もしかしたら本の中に何か書かれているのではないのかと思い、カバンから辞典を取り出し中を見てみた。
「やっぱり何は書いてある、これはもしかしたら照月綾が僕に伝えたかったことか!」
なにか書いてあるけど何が何だかわからない、見たことがない言葉で書いてなる。
その時だった。
ずっと道を歩いて帰宅していたはずだったのに小屋にいた。国語辞典も持っていなかった。驚いたのはそれだけではない。
そのに行方不明になった照月綾がいた。