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忌み子のウォーカー  作者: 優木悠介
第一章 旅立ちと藍い眼の少女
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拙い文章になりますが、今後とも宜しくお願いいたします。


2017/10/30 一部内容を改稿しました。

文明は一度滅んでいる。子供たちが物心つく頃にはすでにその話を大人から聞いて知っている。

今からは考えられない程の”兵器”を用いた争いで人類の大部分が命を失い、土地は穢れ、高度な文明もその技術のほとんどが失われた。



ここはチーリクの村。俺の生まれ故郷だ。

過去に高度な文明が本当に築かれたのか疑わしいほど、のどかで静かな自然に囲まれた村。唯一残る文明の名残と言えば森の中のあちこちにある瓦礫や、朽ちた金属の塊くらいだろうか。


俺は今年で18になりこの村から出ていくことになる。ただ、それに対する寂しいとか、残念という感情は湧いてこない。この村で、俺をウォーカーと呼んでくれる人はただの一人もいない。それが例え産みの親であってもだ。


「あんた!まだいたのかい!!早く出ておいきよ!汚らわしい忌み子が!」


「・・・」

村長の奥さんだ。その言葉に何の返答もすることなく俺は歩きだす。

村長の奥さんはまだマシな人だ。俺が18になるまで最低限の世話をしてくれた。でもそれは優しさなんかじゃなく、きっと呪いを恐れたんだと思う。


俺が産まれた日、村は大騒ぎになったそうだ。俺の左肩に黒い紋様があったから。

痣のようにもみえるその紋様は特別な意味を持っている。

人間にはない力をもった証であり、それは呪いともいわれる。個人により体のどこに紋様が現れるか差はあれど、必ず何か人外の力と、それに対する呪いを受ける。


中規模以上の町であれば忌み子は1~2人はいるらしいが、チーリクの村ほどの小さな村に忌み子が産まれることは珍しかった。


俺の生まれ持った力は、発光。ただ明かりを灯す力。それに対する呪いは不眠。意識を失うことさえあれど、眠ることはできない。

村人は夜になっても一切眠る様子のない赤子の姿に、誰も近づきたがらなかったそうだ。




世界で初めての忌み子の話。その子が産まれたとき周囲にいた人間は、その子に食われたそうだ。力は沸騰、呪いは暴食と呼ばれた。

周囲のあらゆる液体を沸騰させ、視界に入った生物を何でも食いたがったらしい。


化け物が産まれたと大騒ぎになり、その子は弓で射殺された。


この話だけでも忌み子が世界から嫌われるには十分な話だが、話はそこで終わらなかった。


その日、忌み子を射殺した男は高熱により倒れた。

次の日、全身に青紫色の発疹が出て、痛みにのたうちまわった。

3日目、四肢の末端から壊死が始まった。

4日目、男は幻覚を見ながらそこに居ない何かに叫び続けた。

5日目、激痛と幻覚に襲われたまま力尽き息を引き取った。


6日目。2人の村人に高熱がでた。


その奇病はきっちり30日間続き、63人の人間がこの世を去った。


その後、世界各地で忌み子が産まれ、それを殺めた時には必ずこの奇病により、忌み子に関わった者のうち63人の人間が命を失う。人々は忌み子を恐れた。

幸いと言うべきなのか、産まれてすぐ人を襲うような忌み子はほとんどいない。赤子のうちはどんな力を持ち、どんな呪いを持っているのかがわからなかった。


忌み子が嫌われるのはこの力・呪い・奇病が理由だ。


自分たちにはない異端の力をもち、殺せばなぜか決まって63人の人間を道連れにする。人間にとっての恐怖の象徴となり、それは迫害につながった。


その後、忌み子の研究をする学者が何人も現れた。その研究、実験により分かったことがある。

”奇病は成人した後の忌み子が死んだ時には発生しない”


数多くの犠牲により、その事実が分かった後には、忌み子が産まれた時、すぐに人を襲うような者でなければ成人するまでは生かされる。成人した後、基本的には村から追い出されるか、・・・始末されることになる。


同時期、様々な動物の子達が強暴化したり、新たな種が産まれた。


そのため、研究者たちの中には、忌み子を人類の進化の結果だとする者もいれば、汚染された大地の影響による突然変異や、人間ではない新たな種であると主張する者など様々な説がささやかれた。

しかしそのどれも衰退した化学の力では証明することができなかった。


人類は自然と、突然変異した動物を魔物と呼び、突然変異した人間を忌み子と呼び出した。




俺も成人したことにより、今日でこの村をでることになったわけだ。

故郷から追い出された忌み子が向かう先は粗方決まっている。


忌み子が多く集まる大きな街。

それは大抵チカのある街だ。チカでは失われた過去の文明の道具が出土することがある。

動く道具が出土された時には大騒ぎになり、発見者は大金を手にすることになる。


しかし、チカは魔物の巣窟となりやすく只の人間が探索するのは簡単なことではなかった。


そこで多くの忌み子達は自身の力を使い、チカの探索を行うわけだ。自然とチカのある街に忌み子は集まり、そこから出土される道具目当ての人間も多く集まる。忌み子と人間でつくられる歪な構造の街が形成されていく。


それは忌み子にとって世界で数少ない住みやすい街となる。


俺もそんな忌み子の先人達に違わずチカのある街を目指すことにした。


目指すはシンヤの街。

チーリクの村から一番近いチカのある街だ。

チーリクの村からは歩いて20日ほどはかかるだろうか。


幸い俺の不眠の呪いは、旅をする分にはデメリットではないだろう。当然体を休める必要はあるが、夜間眠っている間に魔物に食い殺されることは無いのだから。



こうしてチーリクの村からウォーカーは旅立つ。

彼の装備は動物の革を自分で縫い合わせたボロボロの服と、森の中で見つけた金属の棒きれの先端を鋭く尖らせた武器のみであった。




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