1/4
プロローグ
その本を見つけたのは本当に偶然だった。
普段は入れない地下にある巨大な書庫の一角に、その本はあった。
黒く汚れ年季の入ったその本は、大量の本の中でも一際存在感を放っていた。
…ここにいるのが見つかれば、きっと母さんに怒られるだろうな。
そう考えながらも、僕はその本を手に取り開いていた。
ただただ暗い場所だった
自分の体すら見えないその闇に、しかし不思議と恐怖は無かった
ふと気が付くと目の前に一冊の本が浮かんでいる
それを見た私は、ようやくこれが夢なのだと思い出した
白い表紙に触れ、本を開く
中身は何も書かれていない
当たり前だ、私がこれから書いていくのだから
私は本の隣に浮かびあがったペンを手に取り思い浮かべる
彼らと、私と、そして。
目の前に懐かしい光景が広がった
…ああ、そうだ、あの日はこんな眩しい陽の差す夏の日だった
懐かしい光景に目を細めつつ、私は広がる草原と、その中央ではしゃぐ子どもたちのもとへと歩み始めた