惚れた相手は腐女子だった
10年以上前に自サイトで載せていた作品。
色々ツッコミどころ満載で、生暖かい目で見てくれると有り難し。
当時は腐女子という言葉はなかったので、もとの題名はヲタ女。
「秋山さん、好きです。 付き合ってください!!」
一世一代の告白。
「杉山君は、春日君のだから・・・」
はぁ?
春日って、敬吾のことか?
「いや、別に俺、ものじゃないし・・・」
「やっぱり、春日君が攻めよね~」
攻め?
何か、意味不明に上機嫌で言いながら、歩いていってしまった。
あのぉ・・・、返事は・・・?
・・・。
何?
もしかして、俺、ふられた・・・?
「あゆみ~、お前、ふられたんだって?」
次の日の、学校での第一声。
なんで、お前が知ってんだ、山本!!
「秋山が、春日に言ってたんだよ、朝。
『杉山君をとるつもりは、全く無いから、ど うぞ、付き合い続けてください』
ってね」
はぁぁぁぁぁ?
普通に、ふられるより、キツイし・・・。
せめて、俺に直接断るなら断るで言ってくれよ・・・。
「あゆみ、おはよう」
「敬吾~」
普通に接する敬吾に俺は泣きつく。
「俺、ふられたー」
「そうみたいだね。
でも、どうしてあゆみに言わないで、おれのところに来たのかな?」
知らないよ、そんなこと。
っつーか、なぐさめてくれぃ!!
「はいはい。
痛いの痛いの遠くのお山に飛んでいけ~」
違うから!!
俺、けがじゃないし。
そんなもんで治ったら、医者はいらねー。
ヒシと睨みつけると、敬吾が笑う。
「そんな顔ができるなら、もう直ったね」
よしよしとばかりに俺の頭をなでつける。
完全に子ども扱いだ。
でも、敬吾からしてみれば、俺は子供同然だよなぁ。
なんつったって、敬吾は、176cmの立派な男児。
引き換え俺は・・・。
「あゆみちゃん、泣き終わりましたか~?」
クラスのどいつよりも小さい。
「ちゃんづけしてんじゃねー!!」
「十分ちゃんづけで通るって、あゆみは。
130cmだったけ?」
「ざけんな!!
143.7(ここプライド)だ!!10cm以上小さくすんじゃねぇ!!」
そう、中学生の平均身長どころか、下手すれば小学生の平均身長並みなのだ。
母親が、140なく、父親は160ない。
こんなチビ親から生まれた俺も、もちろんチビ。
あ~、遺伝なんて嫌いだ、このやろう!!
「大丈夫か、あゆみ?」
「全然大丈夫じゃねぇ。もー、全てにおいてハートブレイクだ」
「今日の部活はでれるのか?」
「出る出る、出るに決まってんだろ?
ぜってー、170以上になって、遺伝なんて存在しないことを証明したる!!」
ポンポンッ。
いつの間にか、クラス全員が、遠い眼で俺をみていた。
そして、肩に手をおいたまま、山本が、
「バスケやったってな、無理なものはむりだ。
夢は寝てからみるものだぞ」
不可能だって言いたいのかよ、コノヤロー!!
鳩尾に一発蹴りこんで、山本がうずくまった。
へっ、俺をばかにするからだ、バーカ!!
すっかり、元気になった俺は、そのまま放課後までは元気だった。
「来い、敬吾!!」
「言われなくても」
今日は、1on1形式の練習。
ちなみに、俺が守りで、敬吾が攻めだ。
ゴール下で、油断無く敬吾の動きを見張る。
敬吾の軸足が、左に向いた。
来る―――。
左に追うように走り出したその時、
なっ。
振り向いたゴールには、きれいな曲線を描いて、ボールがネットをくぐる。
シュッ。
独特の音が耳を掠め、ただ、ボールが落ちるのを見ていた。
そう、フェイクだったのだ。
左に行くと見せかけて、シュートだったのだ。
「何、簡単にきめさせてんだ、杉山 !!
外周いってこい!!」
コーチの怒り声勃発。
仕方なく、体育館を出て、外に走りに行ったとき、
「杉山くん」
スケッチブックを持った女子がいた。
秋山と仲の良い、なんだったけかなぁ、名前。
スケッチブックに名前があった。
「・・・寺島?」
「みゆにフラレたでしょ?」
みゆとは秋山のことだ。
クルリと背を向けて俺は走り出した。
人の傷口を開くやつなんか、嫌いだ。
「ちょっ、待ってよ!!」
後ろから、寺島の声が聞こえる。
「みゆと付き合いたくないのー?」
ぴたっ。
俺は立ち止まり後ろを振り返ると、止まりきれなかった寺島とぶつかった。
「っ、ごめんなさい」
「い や、別にいいけど。
・・・さっきの、どーゆー意味?」
「さっきの?あー、はいはい。
そのまんまの意味」
「何?秋山がO.K.くれたの?」
「・・・そーゆーワケじゃないんだけど」
どーゆーワケだよ?
「みゆと付き合いたいなら、あたしの言うこと聞けってこと」
はい?
「まー、ちょっと来なって」
おい、それ、悪徳商法だぞ・・・。
隅のほうの人があまり来ないところに連れ込まれ、なにやら、話された。
「あんた、BLってわかる?」
「なんだ、それ・・・?」
「BoysLove。略してBL」
「はぁ・・・」
「最近はやりなのよ。あ~、いいわぁ」
何が。
っつーか、自分の世界 に行かないでください。
「杉山くんと春日くんのカップリングが最高!!」
はぁ・・・。
って、ちょっと待て。
「俺と敬吾の・・・カップリング・・・?」
「そう!!
ちっちゃくってかわいい杉山くんと、カッコよくって礼儀正しい春日くん。
でも、二人きりのときは、ワイルドになるのぉ~!!」
なんなんだ、それは!!
気色悪りぃ!!
意味わかんねぇ・・・。
カップリングってもしかして・・・。
俺はホモじゃねぇー、っつーか、それと秋山とどーゆー関係があんだよ!!
「知らないの?みゆはあんたらのカップリングが大好きなのよ」
ええええええええええええええええええええええええええええ ええええええええええええええええええええええええ。
驚きの余り、なにも言えない。
絶句したまま、俺は寺島の作戦やらを聞いた・・・。
ベッドに寝っ転びながら、今日の出来事を考える。
「本当に好きなら、か・・・」
俺は、秋山が好きだ。
この気持ちは変わらない。
例え、秋山が俺と敬吾を・・・・・・・・。
寝返りをうつ。
俺は、どうしたいのだろうか?
もう、よくわからない。
このままあきらめる?
その方がいい。
あんなワケのわからない、得体の知れないことを考えてるようなやつ。
けれど・・・。
また、寝返りを打つ。
俺のあのときの感情は嘘ではない。
俺は・・・。
「秋山、好きなんだ。付き合って欲しい」
「杉山君・・・」
「付き合ってくれるなら、今ここで敬吾を好きだといってもいい」
「本当!!」
おい、眼が輝いてるよ・・・。
一週間、考えに考えた。
しかし、そんな簡単に諦められるような恋ではない。
だから・・・。
「男に二言はない」
「じゃぁ、付き合うわ!!」
「敬吾、好きだ!!っつーか、ありがとう!!」
「・・・よかったね、あゆみ・・・」
告白現場に敬吾を連れてきた。
これが、寺島の作戦だった。
告白する際に、このさい、 使えるものは使えというワケだ。
俺と敬吾のツーショットは、秋山には垂涎ものだそうで。
前々から、俺と敬吾の告白シーンを見たいとぼやいていたらしい。
つまり、それを逆手にとるというわけだ。
理由を(あまりいいたくなかったが)細かく言って、敬吾に協力を仰いだ。
半信半疑で、俺の願いを聞いてくれた敬吾。
そりゃ、俺だって信じたくないけれどさぁ。
好きな子が、俺と敬吾が好きあってるとか妄想してるなんて・・・。
けど、この際なりふりかまわずだ!!
目の前のものがまだ信じられていずに、引きつった笑顔を俺に向ける敬吾。
歓喜し、眼を輝かせている秋山。
なぜか、敬吾に 抱きついたままの俺。
もし、この光景を見ていたやつがいても、告白現場だとは思うまい。
かくして、こうして俺は告白に成功した・・・。
よく考えると、あんま、うれしくない気が・・・。