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配役の理お断り・旧  作者: ヤマト〆
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配役の心得⑥

翌日の朝方。


ピンポーン……ピンポーン…ピンポーンピンポーンピンピンポーピンポーピンポー__


「うるせぇ!!何だよ朝から!?嫌がらせにも程があるだろう!?何時だと思っていやがる!!」


時計は一瞥すると、只今午前六時。まだ寮の学生が目覚めるには早過ぎる時間だ。


その間にもインターホンを連打している強者を、覗き穴で覗こうとしたが、それよりも早く怒鳴りつけてやろうと言う想いが打ち勝ち、ドカンとドアを勢い良く開いた。


「こんな時間にピンポンピンポンうるせぇんだ…!?」


怒鳴り付けようとしたのだが、目の前にいるある男の姿を見て、臆人の口から言葉が一気にひゅるひゅると抜けて行く。


「よぉ臆人!!早起きは三文の得だぜ!?」


アメリカによく居そうな少しボサついた短めの金髪。そして眼鏡のレンズがどうしてか渦巻状に縁取られ、その奥が見えなくなっている。


俗称的にはオタク眼鏡みたいなものだろうか。だが、その金髪の髪と見事なミスマッチを施している。


そして極め付けの服は、ゴスロリである。黒と白のコントラストが生えるフリフリのメイド服は、もう完全に痛々しく生々しい。


言葉を無くした、とは正にこの事である。


「オーマイガー…取り敢えず病院行くか?」


「おいおいこのキャサリン様に向かってホスピタルゴーとは何事だ?これはれっきとした女装だぜ?」


「病院いくってとこだけ英語にすんな!つーかな、それどう見たって女装じゃねぇ!どちらかっつーと変装だ!!」


ツッコミどころ満載の女装だが、それより気になることが一つ、二つ、三つ。


「とにかく中に入れよ。こんな所でそんな女装している奴と話してると俺の性癖が疑われちまう」


「おうそれは助かるぜ!!恥ずかしさ九割位増しててやべーんだ!!」


「分かっててやってるとしたらお前のそれは性癖だ!!」


とにかく凶を中に入れ、ドアを勢い良く閉める。こんな所を見られていたら一生の恥なので、とにかく早く閉めた。


手早く床に座らせ、聞きたいことを聞くことに。


「何で来た?しかもわざわざこんな早い時間に何で?てか女装のクオリティー低くね?そのオタク眼鏡どこで買ったの?何で外人風のカツラなの?それで学校行くのか?捕まるぞ?てか、何で女装?まだハロウィン遠いよ?」


「おいおい今日は昨日俺達が決めた配役論があるんだぜ?これで全部分かったろ?ていうか、これはカツラじゃねぇウィッグだ」


変なところを訂正してる凶はさておき、今日は確かに配役論が始まる日であるし、この言葉によって何をしたかったのかは理解出来た。


だが、この時間帯から始めるべきでは無い気がするが、取り敢えず今は置いておこう。


「つまり…徹夜で女装してたらこんな時間になったから取り敢えず隣にいる俺に見てもらおうか的な?」


「的な」


臆人の眉がピクピクと動いた。こんな事で早く起こされた自分の気持ちをどうやって相手に伝えるか、難しいものだ。


「取り敢えず言うぞ?いっぺん死ねぇぇぇぇ!!!!!」


「いぎゃぁぁぁぁぁ!!!!!!」


取り敢えず凶にワンパン食らわせた所で、話を再開する。


「つーか、俺に見せに来た所で大した感想言ってやれねーよ!あ、いや、だが俺が女装させた方がまだ上手いわ!!」


その言葉を言ったのが運の尽きと言うべきか。その瞬間、凶の顔がぱあっと輝いた。嫌な予感がする。


「本当か!?ならお願いするわ!!俺の部屋にちょっとこい!!」


「…へ?」


こうして連れて来られた凶の部屋(と言っても隣)は、まるで大型地震直後の部屋の中を映しているかのようだった。


玄関には靴が散乱し、床にはお菓子のゴミやカップ麺の容器、漫画に小説に服にパソコンにテレビですらも床に置かれている。


途方も無い程の散らかりっぷりに、臆人はぐうの音も出ない。というか、もう帰りたい。


臆人が他人の部屋に行くのは初めてのものだった。臆人自身の家に来る事はあるものの、行く事は無かった。


よって凶の部屋が初めての友達の部屋にお邪魔する、という奴なのだが、汚すぎる。これを初経験にはしたく無い。


しかも、来た理由が女装の手伝いである。最悪にも程がある。


「なぁ…凶。帰っていいか?」


「おいおいおい!!俺を見捨てるのか!?いいのかそれで!?男に二言は無いはずじゃねえのかよ!?」


まるで犬のようにわんわん追いすがる凶に、臆人は溜息を溢して諦めた。やるしかなさそうだ。


「取り敢えず…片付けね?」


「おう!!」


そうと決まれば早速開始する。まだ一週間も経って無いというのに、これはもう酷い。


結局片付けるのに一時間程掛かり、どうにか見えにくかった床が姿を現わす程度に回復した。


只今時刻は七時二十分。


ここから、凶の女装が始まる。


「取り敢えず、この外人風のカツラは辞めよう…この学校には合わなすぎる。他には無いのか?」


カツラの部分を強調させた言い方をすると、凶は不満げに此方を見て吠える。


「いやだからカツラじゃなくてウィッグな!?何度も言うけど!!」


ウィッグとカツラに意味の違いはない。ただ英語か日本語かの違いだ。


目的としては若干違うのだが、それは置いておこう。


ポンとカツラを取ると、埋もれていた真っ黒い髪が水を得た魚のように飛び跳ねる。


「で、あるのか?」


「昨日ドンキボーテで沢山買ったからな…!」


ガハハと笑う凶が、側にあったクローゼットを開けると、そこにはとんでもないほどの量の女性服がぎゅうぎゅうに押し込まれており__


「「ぎゃぁぁぁ!!」」


二人は女性服に埋もれてしまった次第である。


「買いすぎだろ!?どんだけ女装する気だよ!?」


「いや、あれもこれもいるのかと考えたらつい…」


つい、にしてもやりすぎ感が出ている。試しにひょいと手につかんだ紐のようなものを持ち上げてみると、それは下着だった。


しかもピンクを基調とし、そこに黒の水玉模様が入れてある。何とも女性らしいものだが、ここまでする必要は絶対に無い。


「こ、これ…どうやって買ったんだよ…」


「あ、いや…彼女へのプレゼント的な?」


「どこに下着をプレゼントする彼氏がいるんだよ!?」


ランジェリーショップに入る彼氏など彼女側は想像したく無いだろう。まあ、それを愛によるものと割り切る人達もいるのかもしれないが、臆人的には御免である。


このままでは掃除をして、ツッコミを入れるだけで登校時間が来てしまう。


「取り敢えずだな!普通の女性にすればいいんだろ?」


この一言から僅か五分もかからずで、凶の女装は完成した。出来映えは何とも言えない。この手のものは基準が分からない。


取り敢えず服装はワンピースにした。それが一番手っ取り早い。綺麗目のグレーに、多少のフリルが付いた清楚なものだが、これでいい。


そしてウィッグは少し茶が掛かった程度の黒髪で、少しウェーブさせた物をチョイスしている。


メイクなどは、凶自身が幼さの顔が残った顔立ちのため、すっぴんだ。少し黒目を大きくするためカラコンを入れようとしたが、時間も無かったためそこまではしない事に。


因みに下着はつけていない。時間もないし、必要ない。


こうして、凶の女装は完成した。


「因みに配役論は五限だから、それまではそのままだぞ?」


「なにぃぃぃ!?!?」


うがぁぁぁぁと、顔を両手で覆いながら凶は呻く。どうやら恥辱の部分は残っているらしい。


「恥ずかし過ぎて死ねる!!」


「じゃあ脱いで昼休みに着替えろよ…」


「その手があったか!!」


凶の天然さにこんな朝っぱらから溜息を二度も吐くとは思いもしなかった。そして時計を一瞥する。


時刻は八時を過ぎた辺りだ。


「やべーぞ凶!!早くしねーと遅刻だ!!」


「なにぃぃぃ!?!?」


臆人は隣の部屋に行こうとして制服に__


「「あ……」」


この時二人共気が付いたのだ。


「「制服じゃんかよ!!!!!!」」


こんな一幕から朝は始まり、二人は制服に着替えて部屋を飛び出した。


結果はギリギリアウトで、二人はマダムス教官から説教を喰らう羽目になった。







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