さよなら、服。
ーーー
「もうすぐ10人目が到着します。到着次第、説明をさせていただきます。」
新野ランとその他8人の男女9名の座るイスの前方にはなにもない。少し離れた位置に机とイス、そこには先ほど連絡事項をアナウンスした西洋人の女性と、おそらく日本人であろう男性が腰掛けていた。円形の魔法陣(この表現が正しいのかどうかは置いておく)の中に孤を描くようにイスが10脚ならべられ、左端は空席、左から2番目にランが座り、他の8つには男女バラバラに座っていた。しかしその顔ぶれを見ると、何か法則があるようで、ないような気もする。
ランが'ここ'に来た時、少し離れた案内人らしき人物以外には誰もいなかった。空席はランの右隣から埋まっていき、その登場の仕方は、少々ランを驚かせた。
「あの、ここはどこなのでしょうか。」
右端のイスに座る女性が声を上げる。数名が彼女の方を見、また不思議な魔法陣に視線を落とした。
「そうですね。10人目の方の到着が遅れているようなので、前倒しで説明を始めましょう。」
今更ながら、西洋人の女性が流暢に日本語を喋ることに違和感を覚えた。口には出さないが。
「ここは、『天界』です。本来ならばすぐに生命の輪廻に戻すはずの貴方たちをここにお招きしたのは他でもありません。是非、異世界、俗に言うパラレルワールドに転生していただきたいのです。」
9人の表情は全く変わらない。自分が『死んだ』ということはある程度理解はしていたらしい。
「パラレルワールドってーーー」
真ん中の男性が質問しようとした瞬間、ランの隣のイスの下に激しい光と音を伴う魔法陣が出現した。さすがにこれには数人が驚き、いや新しい物体に多少興味が出た程度だろうか。
激しい光はいつの間にか人の輪郭を描き出し、骨格からそれが男性であることがわかる。9人はみなパジャマのようなものを着ていたが、しかし、現れた10人目の男性のパジャマは、その登場の瞬間、'木っ端みじん'に消し飛んだ。