紙が散乱する部屋。そこは…。
まだ、夏ではない。
が、エアコンは25度に設定され、扇風機は部屋の隅々まで風を送っていた。
そのせいか、並んだ机に積まれた資料、紙の束は宙を舞い床に落ちる。
床に落ちた紙を拾う者はおらず風に押され部屋の中のあちらこちらを旅する。
まるで猫に荒らされたみたいに、部屋中に紙が散乱した。
部屋は学校の職員室のような構造でやや広い。職員室といっても学校によって違うだろうが、机が並んでいて、片付いている机もあれば、山のように物が載っている机もある。
この部屋には片付いている机はない。
ガチャリ、と部屋のドアが開いた。
入ってきたのは40代後半くらいの男。
散乱した紙を見て、あちゃーというふうに苦い顔をして頭に手をあてる。
「やっちまったぁ。でもま、いいか。ほっといても誰かが片付けるだろう」
「自己中、成敗!」
男の頭を、後から入ってきた少女がぱしんっと叩いた。
「い、痛てっ!お前、父親に向かって…」
頭をさする男。
そこで、後ろから上品な声が。
「あの、もし…」
少女と男は振り返る。
品のある婦人が戸惑いがちに立っている。
男は、はっと閃いたように言う。
「もしかして、佐藤様でいらっしゃいますか?」
婦人が答える。
「ええ、そうです」
それを聞いた男と少女は頭を下げた。それから男は言った。
「ようこそ。私はここの所長をしております
誉美川英雅です」
婦人は少女を一瞥して尋ねた。
「そちらのお嬢さんは?」
男も少女をちらと見て答える。
「娘の千尋です。まだ幼いですがここの所員です」
婦人は少し驚いたようだが、ああ、そうですか、と言った。
「では、こちらへ」
英雅は婦人を応接間としている部屋へ案内した。
千尋は散乱した紙をため息をついて見つめていたがやがて、拾い集め始めた。
さて、応接間に着き、ソファに座るや否や婦人は話を切り出した。
「主人の浮気調査をして頂きたいのですが…」
「お任せください。木暮探偵事務所には優秀な探偵が揃っております…」
そう、ここは探偵事務所なのだ。
初めての投稿でドキドキしてます。
っていうか私の小説なんて読む人いるのかな?