きっかけは
暗い・・ーーー
暗い
闇の中・・・・・。
一人の少女が立っていた、ただ何をするわけでもなく。
ーー私は気が付くとそこに居た。
ここが何処なのか、そんな疑問さえ浮かばなかった。
突然、目の前が光出す。
暗闇になれた少女は眩しさのあまり、顔をゆがませた。
「!!?」
その突然の光に思わず少女は顔の前に両手を掲げ目をつむる。
ようやく光が治まったので少女が目を開けてみると、目の前に5・6歳位の子供が立っていた。
自分に良く似た子供が・・・。
「・・・・・・・?っ!!!」
ーーー声が出ない。
少女は自分の喉に手をあてて、もう一度声を出そうとするがやはり出なかった。口をパクパクさせるだけで、何も聞こえない。
それどころか、服の擦れる音さえ聞こえないのに気づいた。
まるで、この闇の中に音と言うものが存在しないかのように・・・・
いきなり現れた子供は、スッと少女に何かを差し出した。そして口を少し動かす。
「お前に頼みたいことがある。私の変わりにーーーーーー。」
直接、脳に響き渡るような感じがした。ゆっくりとした口調で子供とは思えないくらいだった。
「必要な物は全てこれに入れろ。また、明日迎えに来る。」
だんだんと少女の意識が薄れていく。
少女は深い闇へと落ちていった。
「琴子。起きなさい!!」
下から聞こえてくる母親の声で琴子は目が覚めた。
しかしベッドから起き上がろうとはせず、しばらくベッドにうずくまっていると、また下から母親の声が聞こえた。
始めより少し苛ついた声で呼びかけてくるので琴子はしかたなくベッドから起き上がる。
「(ぅ・・・・眠い。変な夢見た・・・・。)」
まだ覚め切らない頭でもぞもぞと制服に着替えていると、3度目の声が聞こえる。
琴子はようやく、目を開き慌てて扉に向かって走る。
その拍子に、床に置いてあった鞄を踏みつける。
「うわっとっと!」
「琴子!」
「は、はーい。」
琴子は大きな音を立てて階段を下りて行った。
ーーそれが、私がこの世界に来たきっかけ。
半強制的ではあるんだけれど、それまで私はただの高校生だった。