ピンク
よんでください。
ねえ、アイス、とけちゃうよ。
そんなにせかさないでよ。あたしがとけちゃう。
そんな会話をしていた。
あたしがとける?
コハルは相変わらず突拍子もないことばかり言う。
でもあたしはコハルについていっている。いまんところね。
「ねえ、ハルコ。アイス、あんたのもとけそうよ」
そういうとコハルは長いきれいなピンクの舌をだして、あたしのアイスをなめた。
心臓が、おどりだす。
「コハル、やめてよ」
あたしはあわてて言う。
「本音はどうなのよ」
え?こころを見透かされたようで、どきり、と音が聞こえるほどにあたしの胸は騒いだ。
「アイス、もったいないでしょ?」
そういうことか。
「そだね」
あたしは何を考えてるのだろう。コハルがアイスをなめたからといってどうだというんだ。
あたしもコハルも女の子じゃないか。それぐらい、戯れにするさ。
そう思ってもあたしの胸は叫ぶ。
コハルと初めてであったのは、地下鉄の駅だった。
となりに立つ、妙にきれいな女の子の携帯がなった。
するとあたしの携帯もなった。
おんなじ着メロだった。あたしはびっくりした。だって、とってもマイナーな曲だったから。
「もしもし、コハルです」
「もしもし、ハルコです」
電話を切ったのもほぼ同時。コハルが話しかけてきた。
「あなたも、あの歌手好きなの?」
「ええ、まあ」
「あたしもよ。それに、あたしたち名前もそっくりじゃない。面白いわ」
そういうとコハルは大きく口をあけて笑った。そのときだ。コハルの舌がこんなにもきれいなのを知ったのは。
それいらいコハルとは不思議な関係が続いている。
しばらく遠ざかったと思ったら、ふいに、メールがくる。
「明日、会える?」
ざわざわざわ。また胸が騒ぐ。
コハルはプリクラがきらいだ、という話をえんえんとしていた。
「どうして?」
そうあたしが尋ねると、
「だって、どこにはるのよ。自分の醜い顔なんて」
「そんなことないよ。コハル、かわいいじゃん」
あ。だめだ。頭の中がぐるぐるしてきた。
「かわいくないわよ。あたし、自分の顔が世界で一番きらい」
そんなことない。そんなことない。あたしは必死に否定する。
「じゃあ、どこがかわいいの?」
「舌、とか」
「舌あ?舌って、べろってこと?あんたどこ見てるわけ?」
「だって、あたし、あたし」
ぐるぐるがとまらない。
「ハルコ、ちょっとあんた何ないてるの?」
「え、あたし泣いてる?」
「ほら」
コハルはスウィマーの鏡を取り出すと、あたしに突きつけた。
「あ。ほんとだ。泣いてる。なんでだろ?」
「あたしのこと好きだからでしょ?」
顔がほてる。
「ちがうよ」
「ちがわない」
「だって女同士だし」
「やだ、そんな『好き』だと思ったの?あんた変態?」
そうかもしれない。
「ちがうの。コハルの舌が好きなの」
へー、と平坦な発音で言うと、コハルはあたしの頬に舌を押し当てた。なめる、っていうのとも違うし、キスとも違う。
「いいじゃん。あたしもハルコが好きだよ。いろんな意味で」
もう逃れることはできない。
あたしたち、こうやって、オチテユク。
ありがとうございました。




