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ピンク

掲載日:2007/02/07

よんでください。

 ねえ、アイス、とけちゃうよ。

 そんなにせかさないでよ。あたしがとけちゃう。


 そんな会話をしていた。

 あたしがとける?

 コハルは相変わらず突拍子もないことばかり言う。

 でもあたしはコハルについていっている。いまんところね。


「ねえ、ハルコ。アイス、あんたのもとけそうよ」

そういうとコハルは長いきれいなピンクの舌をだして、あたしのアイスをなめた。

 心臓が、おどりだす。

「コハル、やめてよ」

あたしはあわてて言う。

「本音はどうなのよ」

え?こころを見透かされたようで、どきり、と音が聞こえるほどにあたしの胸は騒いだ。

「アイス、もったいないでしょ?」

そういうことか。

「そだね」

あたしは何を考えてるのだろう。コハルがアイスをなめたからといってどうだというんだ。

 あたしもコハルも女の子じゃないか。それぐらい、戯れにするさ。

 そう思ってもあたしの胸は叫ぶ。





 コハルと初めてであったのは、地下鉄の駅だった。

 となりに立つ、妙にきれいな女の子の携帯がなった。

 するとあたしの携帯もなった。

 おんなじ着メロだった。あたしはびっくりした。だって、とってもマイナーな曲だったから。

「もしもし、コハルです」

「もしもし、ハルコです」

電話を切ったのもほぼ同時。コハルが話しかけてきた。

「あなたも、あの歌手好きなの?」

「ええ、まあ」

「あたしもよ。それに、あたしたち名前もそっくりじゃない。面白いわ」

そういうとコハルは大きく口をあけて笑った。そのときだ。コハルの舌がこんなにもきれいなのを知ったのは。

 それいらいコハルとは不思議な関係が続いている。

 しばらく遠ざかったと思ったら、ふいに、メールがくる。

「明日、会える?」

ざわざわざわ。また胸が騒ぐ。



 コハルはプリクラがきらいだ、という話をえんえんとしていた。

「どうして?」

そうあたしが尋ねると、

「だって、どこにはるのよ。自分の醜い顔なんて」

「そんなことないよ。コハル、かわいいじゃん」



あ。だめだ。頭の中がぐるぐるしてきた。

「かわいくないわよ。あたし、自分の顔が世界で一番きらい」

そんなことない。そんなことない。あたしは必死に否定する。

「じゃあ、どこがかわいいの?」

「舌、とか」

「舌あ?舌って、べろってこと?あんたどこ見てるわけ?」

「だって、あたし、あたし」

ぐるぐるがとまらない。

「ハルコ、ちょっとあんた何ないてるの?」

「え、あたし泣いてる?」

「ほら」

コハルはスウィマーの鏡を取り出すと、あたしに突きつけた。

「あ。ほんとだ。泣いてる。なんでだろ?」

「あたしのこと好きだからでしょ?」

顔がほてる。

「ちがうよ」

「ちがわない」

「だって女同士だし」

「やだ、そんな『好き』だと思ったの?あんた変態?」

そうかもしれない。

「ちがうの。コハルの舌が好きなの」


 へー、と平坦な発音で言うと、コハルはあたしの頬に舌を押し当てた。なめる、っていうのとも違うし、キスとも違う。


「いいじゃん。あたしもハルコが好きだよ。いろんな意味で」


 もう逃れることはできない。


















 あたしたち、こうやって、オチテユク。

ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 不思議な感覚になりました。 でも面白い。女の子同士っていうのがなんか良かったです。 コハルがハルコを好きな意味って…??
[一言]  浮遊感のある作品だと感じました。ピンク色の舌という奇異なポイントが鮮明に浮かび、二人の不思議な関係が心に染みてきました。
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