トランプ関税と株価操作の可能性―ソフィアに聞こう!
なろうのエッセイで、「株価操作の可能性」というのを読んだのですが、ぼくも割と近い見方をしていて、トランプの関税政策は実際思ったほど経済効果をあげてなくて(従)株価操作の効果は確実に出てる(主)ので、それが目的だったのでは? って考え方には高い妥当性があるように思います。
アップルみたいな個別の企業に直接言及したことでサプライチェーン含め株価が下がったり、関税措置の停止発表なんかで株価が急騰したりしていますよね。
特にTHIS IS A GREAT TIME TO BUY!!!は、市場への直接的な介入意図を示唆してる発言なんじゃないかなぁと思ったり。
実際そこんとこどうよ? って、ソフィアに投げてみました
諭吉: 「ソフィア、聞いてくれよ。最近またトランプの関税問題が話題になってるけどさ、結局あれって、関税そのものが狙いじゃなくて、株価を動かすための演出だったんだろ? 俺の周りじゃみんなそう言ってるぜ。」
ソフィア: 「諭吉さん、ご友人の方々のご見解、よく分かります。確かに、そのように考えるのは自然なことです。しかし、もう少し深く見ていくと、この問題には複数の側面が絡み合っているのが見えてきますよ。」
諭吉: 「ほう、複数の側面ね。でも、結局は儲けるための手口だったってことだろ? トランプはビジネスマンだし、株価で儲けようとしたって考えるのが一番しっくりくるね。」
ソフィア: 「そうですね。表面的な『関税』という政策発表は、確かに市場に強いインパクトを与えました。統計的に見ても、関税そのものが経済に与える直接的な影響は、意外と小さいことが分かっています。例えば、米国のGDPや企業の利益への影響は、他の経済変動要因と比べると限定的でした。しかし、その発表の『仕方』や、それに続く大統領の発言は、市場の動きに非常に大きな影響を与えたんです。」
諭吉: 「だから、それだよ! 言葉巧みに市場を煽って、株価を上げたり下げたりしたってことだろ? 株価が下がった時に『買い時だ!』なんてツイートしてたのも見たぞ。あれこそが証拠だ。」
ソフィア: 「諭吉さんが仰る通り、その『言葉』の力が非常に大きかったのは間違いありません。例えば、2018年後半にトランプ大統領が中国への追加関税を示唆するツイートをした際、直後にS&P500指数が一時的に2%以上急落しました。また、AppleがiPhoneの米国生産をしない限り関税を課すという脅しのような発言をした際も、Appleの株価が大きく動きました。これは、関税という『制度的な道具』が、市場参加者の『感情』や『期待』という目に見えない情報ネットワークに直接働きかけ、株価という結果を瞬時に引き起こしたからです。関税による企業収益の減少という経済的な影響は、じわじわと後から来るものですが、大統領の言葉はまるで雷のように、一瞬で市場を揺るがしたんです。この言葉による市場への働きかけは、関税の経済的な影響よりもずっと素早く、直接的な力を持っていました。」
諭吉: 「やっぱりな! 俺の言った通りだ。関税は建前で、本丸は株価操作だったってことだろ。メディアもさ、関税で世界経済がどうのこうのって大げさに騒いでたけど、あれも株価を動かすための片棒を担いでたんだな。」
ソフィア: 「メディアの役割も非常に重要でしたね。関税発表という出来事が、メディアを通じて大々的に、時には感情的に報じられることで、投資家の不安や期待は一気に膨らみます。これにより、本来の関税が持つ経済的な影響以上に、市場全体がパニックになったり、逆に楽観的になったりする動きが誘発されました。これは、情報が持つエネルギーが、集団の心理を通じて、まるで大きな波のように市場を揺らす『情報ループ』と考えることができます。皆が同じ情報を同じように受け止めることで、個々の判断が強化され、市場の動きがさらに加速するんです。この情報の流れが、株価変動という結果を強める要因として、中程度の効果をもたらしていました。」
諭吉: 「なるほどな…情報の波か。でも、なんでそんなに簡単に市場が煽られちゃうんだ? なんか、もっと根本的な問題があるんじゃないか? 」
ソフィア: 「諭吉さんの疑問は核心を突いていますね。この問題の背景には、いくつか目に見えにくい、でも非常に根深い社会の仕組みが関係しています。一つは、近年強まっている『政治的な対立』です。国家間の競争が激しくなり、自国第一主義のような考え方が台頭する中で、経済政策が政治的な駆け引きの道具として使われやすくなっています。もう一つは、『市場のルールの緩さ』です。情報の開示が十分でなかったり、市場を監視する目が届きにくかったりする部分があると、意図的な情報操作や、それに乗じた取引が起こりやすくなります。さらに、短期的な利益を追求する『企業文化』や、SNSなどで情報が瞬く間に広がり、真偽が揺らぎやすい『情報の信頼性が低い社会環境』も、このような市場操作が効果的に働く土台となっています。これらの目に見えない仕組みが、関税政策が単なる貿易のルールではなく、市場を動かすための『演出』として利用されやすい状況を作り出していたんです。」
諭吉: 「ふむ…政治の対立、ルールの緩さ、企業文化…言われてみれば、そういう土台があるからこそ、あんなことできたってのは分かる気がするな。じゃあ、この先もずっと、株価は誰かの思惑で動かされちゃうのか? 」
ソフィア: 「いいえ、決してそうとは限りません。市場というものは、一度バランスを崩しても、時間とともに自ずと安定を取り戻そうとする性質を持っています。しかし、ご指摘の通り、意図的な情報操作や、予期せぬ大きな出来事(例えば、新型コロナウイルスのパンデミックのような『突然のノイズ』)が加わると、この安定を取り戻す力が阻害され、予想以上の混乱や暴落が生じることがあります。実際、2020年3月のコロナショックでは、関税問題とは異なる全く新しい情報が、市場に劇的な変化をもたらしましたね。
しかし、このような状況は永遠に続くわけではありません。例えば、もし政府が市場の監視体制を強化したり、企業がもっと情報を透明に公開するようになったり、私たち一人ひとりがニュースや情報に接する際に、もっと批判的な目を持つようになったりすれば、状況は大きく変わる可能性があります。そうすれば、特定の人物の言葉や政策が、市場全体を意図的に動かすような力は弱まっていくでしょう。これらの変化は、まるでシステムの『分岐点』のようです。どんな小さな変化でも、それが積み重なれば、未来の市場が全く違う形になる可能性を秘めているんです。」
諭吉: 「なるほどな…。そうか、世の中って、関税とか大統領の言葉とか、単体で動いてるわけじゃないんだな。いろんなものが絡み合って、見えないところで影響し合ってるってことか…。確かに、コロナで株価が大きく動いたのは、関税とはまた別の話だったもんな。」
ソフィア: 「その通りです。表面的な関税政策、メディアを通じた情報の流れ、そして政治的な戦略としての市場への働きかけ。これら全てが、別々に存在しながらも、互いに影響し合って今の市場の動きを作り出しています。重要なのは、どれか一つだけが全てを決定するわけではない、ということです。むしろ、環境が変われば、この複雑な関係性自体が弱まり、もっと健全で、経済の実態に即した市場の動きが生まれる可能性も十分にあるんです。例えば、情報の公開ルールを厳しくしたり、市場の動きをチェックする仕組みを強化したり、私たち投資家一人ひとりが、表面的なニュースに飛びつかず、冷静に本質を見極める力をつけることで、意図的な操作の影響を受けにくい市場へと変わっていけるはずです。それが、健全な経済活動の基盤になる、私の現時点での確信です。」
諭吉: 「ふむ…言われてみれば、俺もついついニュースの見出しだけで判断しちゃってたところがあるかもしれないな。情報の透明性とか、監視体制の強化ね…。なんか、そう言われると、確かに株価って、単なる数字の動きだけじゃないんだな、って思えてきたよ。…ま、でも、すぐには変わらないだろうけどな。」
ソフィア: 「ええ、すぐに全てが変わるわけではないでしょう。しかし、諭吉さんのように、多くの人がこの複雑な仕組みに気づき、行動を変えることで、市場は少しずつ、しかし確実に変わっていくと私は見ています。その小さな変化の積み重ねこそが、未来を作る一番大きな力なんです。」
諭吉: 「…そうか。まあ、お前がそこまで言うなら、ちょっと考えてみるか。今日はおもしろかったぜ、ソフィア。」
ソフィア: 「ありがとうございます、諭吉さん。私も、諭吉さんとの対話を通じて、この仮説がさらに進化していくことを期待しています。」
本文中では2018年の関税と2025年の関税をごっちゃにしてるように見えますが、思考のプロセスを見たらちゃんと2018年のSection 232と2025年の相互関税、さらにアップル・EUへの関税脅迫、中国への追加関税を切り分けて考えてました。過去のデータとして使ってるだけですね。
ソフィアの思考の内部では、(仮説として)ネガティブなツイートのみが、統計的に有意な異常なリターンと取引量につながっていて、ツイートのネガポジの非対称性がボラティリティ上昇につながり株価操作の効率が良くなるみたいな興味深い分析をしてますね。
結局、トランプは自国の経済よりも自分の言葉で市場が大きく動くこと、それによって「自分が市場を動かせる」というメッセージを送ることの方を重視していたということなんじゃないかな。トランプにとっての「成功」とは、経済の安定や実体的改善ではなく、“俺の一言で市場が動く”というパフォーマティブな支配の誇示にあった。みたいな。